良食味でいもの外観が優れる食用カンショ新品種「べにはるか」(旧系統名 九州143号)

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要約

カンショ「べにはるか」は蒸しいもの糖度が高く、食味は良好である。いもの外観が優れ、線虫抵抗性を示す。

  • キーワード:サツマイモ、食用、良食味、糖度、線虫抵抗性
  • 担当:九州沖縄農研・サツマイモ育種研究チーム
  • 連絡先:電話0986-24-4274、電子メールsatsumaimo-team-mykz@gp.affrc.go.jp
  • 区分:九州沖縄農業・畑作、作物
  • 分類:技術・普及

背景・ねらい

食用カンショの主力品種「高系14号」は早期肥大性で安定した収量性を示すが、サツマイモネコブセンチュウに弱く、栽培条件によっては形状の乱れや丸いもの発生などがみられる。また、食味は中程度で、特に早掘から標準掘にかけて甘みが強くおいしい品種を望む声が市場や生産者等から寄せられている。こうしたことから、食味が優れ、線虫抵抗性をもち、皮色や形状などのいもの外観が優れた食用品種を育成する。

成果の内容・特徴

  • 「べにはるか」は平成8年に、いもの外観が優れる「九州121号」を母、皮色や食味が優れる「春こがね」を父として交配し選抜した系統である。
  • 蒸しいもの糖度(Brix%)は「高系14号」より高く、甘みが強くておいしい(表1)。
  • いもの皮色は赤紫、肉色は黄白で、外観は「高系14号」より優れ、A品収量が高い。(表2、表3、図1)。
  • 育成地における上いも重は標準、早掘栽培ともに「高系14号」より多い(表3)。
  • サツマイモネコブセンチュウ抵抗性は「強」で「高系14号」より優れる。ミナミネグサレセンチュウには「やや強」の抵抗性を示し、黒斑病には「中~やや弱」である(表2)。
  • 貯蔵性は「易」で、「高系14号」並である(表2)。

成果の活用面・留意点

  • 鹿児島県で青果用の奨励品種として採用され、大分県でも有望視されている(鹿児島県における普及見込み面積200ha)。
  • 貯蔵中に糖化が進みやすく、蒸しいもが粘質化して浸出液(ドリップ)が出る場合がある。
  • 黒斑病抵抗性が「中~やや弱」なので、種いもや苗消毒を徹底し、圃場管理を適切に行う。
  • ネコブセンチュウ抵抗性はSP1レースが優先の試験圃場での結果である。

具体的データ

表1 蒸しいもの特性

表2 いもの特性、病虫害抵抗性および貯蔵性

表3 育成地および鹿児島県における収量性

図1 べにはるかの塊根

その他

  • 研究課題名:良食味で加工適性に優れた甘しょ品種の育成と新たな有用特性を持つ甘しょ育種素材・系統の開発
  • 課題ID:311-e
  • 予算区分:交付金、基盤
  • 研究期間:1996~2006年度
  • 研究担当者:吉永 優、甲斐由美、石黒浩二、熊谷 亨、片山健二、境 哲文、中澤芳則、山川 理