暖地の新規需要米向け多収イネ品種に対して薬害を生ずる除草剤

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要約

暖地の新規需要米向けイネ品種「ミズホチカラ」「モミロマン」および「ルリアオバ」は、ベンゾビシクロンやテフリルトリオンにより、甚大な生育抑制と白化症状が生じるので、絶対に使用しない。「ミナミユタカ」「ニシアオバ」「タチアオバ」「まきみずほ」などの品種は、強い薬害を生じない。

  • キーワード:除草剤、新規需要米、多収イネ品種、薬害
  • 担当:九州沖縄農研・イネ発酵TMR研究チーム
  • 代表連絡先:電話0942-52-3101
  • 区分:九州沖縄農業・水田作、九州沖縄農業・畜産・草地(草地飼料作)
  • 分類:技術・普及

背景・ねらい

米粉用などの他用途米、飼料米、飼料イネなどの新規需要に適した多収品種の開発では、IR系統などの外国系統の遺伝子の導入による育成などが行われてきた。食用イネ栽培で農薬登録されているいくつか除草剤は、外国のイネ品種では薬害が発生する場合があることが知られている。そのため、新規需要に適した多収イネ品種の除草剤に対する反応を予め把握しておく必要性がある。そこで、暖地新規需要向けの多収イネ栽培において、今後広く普及が見込まれる品種について、除草剤感受性の品種間差を明らかにする。

成果の内容・特徴

  • 「ミズホチカラ」「モミロマン」および「ルリアオバ」は、カフェンストロール・ベンスルフロンメチル・ベンゾビシクロン粒剤およびテフリルトリオン・フェントラザミド水和剤の処理により、強い生育抑制と白化症状を示し、通常使用量で枯死に至る場合がある(表1図1図2)。
  • 上記品種は、それ以外の除草剤の処理で強い薬害は生じない(表1表2図1)。
  • 「ミナミユタカ」「ニシアオバ」「タチアオバ」「まきみずほ」「モグモグあおば」は、いずれの除草剤でも強い薬害は生じない(表1表2図1)。
  • 薬害の要因は、その症状より、化学構造からトリケトン系とされる4-ヒドロキシフェニルピルビン酸ジオキシゲナーゼ(4~HPPD)阻害型除草成分のベンゾビシクロンおよびテフリルトリオンによるものである。また、4~HPPD阻害型除草剤であっても化学構造からピラゾール系とされるピラゾレートの処理では薬害は生じない(表2)。
  • したがって、「ミズホチカラ」「モミロマン」および「ルリアオバ」には、ベンゾビシクロン、テフリルトリオンなどトリケトン系の4~HPPD阻害型除草成分を含有した除草剤は絶対に使用しない。

成果の活用面・留意点

  • 他用途米、飼料米、飼料イネなどの暖地新規需要米向け品種の種子販売者およびその栽培指導員(農業普及指導員、JA職員等)が、雑草防除指導する際に活用する。
  • 温暖地向け品種の「タカナリ」「ハバタキ」「おどろきもち」「兵庫牛若丸」も、トリケトン系の4~HPPD阻害型除草成分により甚大な薬害を生ずる(平成21年度関東東海北陸農業研究成果情報「新規需要米向け水稲品種の4~HPPD阻害型除草剤に対する感受性」を参照)。
  • トリケトン系の4~HPPD阻害型除草成分には、他にメソトリオンがある。
  • トリケトン系の4~HPPD阻害型除草成分を含む除草剤は、“稲発酵粗飼料生産・給与技術マニュアル”には記載されていない。

具体的データ

表1 暖地の新規需要米向け多収イネ品種の除草剤に対する感受性の品種間差

図1 圃場試験における多収イネ品種の除草剤に対する感受性の品種間差

表2 いずれの多収イネ品種でも薬害が大きな問題とならない除草剤

図2 カフェンストロール・ベンスルフロンメチル・ベンゾビシクロン粒剤に対するイネ品種の反応

その他

  • 研究課題名:地域条件を活かした飼料用稲低コスト生産技術及び乳牛・肉用牛への給与技術の確立
  • 中課題整理番号:212b.5
  • 予算区分:委託プロ(えさプロ)
  • 研究期間:2006~2009年度
  • 研究担当者:小荒井晃、住吉正、渡邊寛明、大段秀記