窒素付加堆肥の窒素肥効率と野菜栽培への利用

要約

窒素付加堆肥の窒素肥効率は0.7で土壌中での窒素の溶出はナタネ油粕よりも速い。本堆肥を全面全層施用した野菜栽培では化学肥料主体の慣行施肥と同等の収量、品質が得られ、跡地土壌の交換性カリウム含量も一定範囲に保てる。

  • キーワード:窒素付加堆肥、有機質肥料、肥効率、ニンジン、スイカ
  • 担当:九州沖縄農研・土壌環境指標研究チーム
  • 代表連絡先:電話096-242-1150
  • 区分:九州沖縄農業・生産環境、共通基盤・土壌肥料
  • 分類:技術・普及

背景・ねらい

窒素付加堆肥は牛ふんおがくず堆肥をベースとし、堆肥脱臭により硝酸態窒素が付加された窒素と加里のバランス良い速効性の有機質肥料であり、その肥料効果について所内栽培試験で有効性が確認された。(平成19年度九州沖縄農業研究研究成果情報)。これを5mm径のペレット状に成形した窒素付加堆肥の製造が熊本県内で始まり、窒素が現物当たり3.5%前後の製品堆肥が供給できるようになった。この肥料の農家実証試験を行い、その施用法について指針を示す。

成果の内容・特徴

  • コマツナポット栽培試験における窒素付加堆肥の窒素利用率は0.63で、同じ条件で化学肥料(硝安)の窒素利用率は0.90である。両者の比をとり窒素付加堆肥の窒素肥効率は0.70と計算される(図1)。従って出荷単位のひとつであるフレコン500 kg(現物)中の化学肥料換算窒素成分は約12.3kg(全窒素約17.5kg)である。
  • 土壌中での窒素付加堆肥からの窒素の溶出率は59~69%で季節、製造ロットを問わず安定している(データ未掲載)。また、ナタネ油粕中の窒素が継続的に放出されるのに対して、速やかに土壌中に放出され、施用1ヶ月以降の溶出はほとんど認められない(図2)。
  • 上記の窒素肥効率に基づきニンジン、スイカの基肥の窒素全量を窒素付加堆肥として全面全層施肥を行う。発芽および初期生育に障害は認められず収量・外観品質は化学肥料主体の慣行施肥栽培と同等である(表1)。
  • 窒素付加堆肥の施用では、連用しても土壌中の交換性カリウム含量は化学肥料単用の場合と大きな差は認められず、牛ふん堆肥施用で問題となるカリウムの蓄積が回避できる(図3)。

成果の活用面・留意点

  • 窒素付加堆肥は含水率15%、乾物あたり全窒素4.12%、リン酸2.04%、カリ3.60%、C/N比8.0である。JAS有機栽培にも用いることが出来る。平成22年2月19日に熊本県に本特殊肥料生産の届出が行われた。
  • 施肥量決定にあたっては本堆肥の窒素肥効率を0.7として計算する。窒素付加堆肥の窒素形態は主に硝酸態であり、播種・定植の直前に施用することが望ましい。イチゴ等生育初期に多かん水する等栽培条件が大きく異なる作物・作型では溶脱の恐れがあるため窒素肥効率の検討が別途必要である。
  • ペレット状(径5mm、長さ8mm)となっているのでブロードキャスター等機械散布が可能である。

具体的データ

図1 窒素施用量と吸収量との関係

図2 春ニンジン栽培期間における窒素溶出

表1 窒素付加堆肥を施用して栽培した野菜の収量結果

図3 窒素付加堆肥連用に伴なう交換性カリウム含量の推移

その他

  • 研究課題名:有機性資源の農地還元促進と窒素溶脱低減を中心にした農業生産活動規範の推進のための土壌管理技術の開発
  • 中課題整理番号:214q.2
  • 予算区分:基盤、委託プロ(バイオマテリアル)、産学官連携経営革新技術普及強化促進事業(成分調整ペレット堆肥等の活用による環境保全型農業技術体系の確立及び普及)
  • 研究期間:2006~2009年度
  • 研究担当者:荒川祐介、田中章浩、原口暢朗、草場敬、村上尚穂(菊池地域振興局)、田中修作(菊池地域振興局)、岩本孝夫(JA菊池)
  • 発表論文: 荒川ら(2010):日本土壌肥料学雑誌、81 (2):153-157