暖地の原野における除草剤を使わないスーダングラスの不耕起栽培

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要約

ヨシやセイタカアワダチソウが繁茂する原野において前植生を刈払い、5月下旬以降に播種することで、除草剤を使用せずにスーダングラスを不耕起栽培できる。

  • キーワード:スーダングラス、不耕起栽培、雑草防除、耕作放棄地、バイオマス
  • 担当:九州沖縄農研・周年放牧研究チーム
  • 代表連絡先:電話096-242-1150
  • 区分:バイオマス、九州沖縄農業・畜産・草地
  • 分類:技術・参考

背景・ねらい

バイオマス資源作物の栽培では食料との競合を避けるため、耕作放棄地や原野等での生産が望まれている。また環境への負荷を軽減するため、省力的な栽培方法の確立が必要である。スーダングラスはソルガム類の一種で出穂期には草丈が3mを超える長大型の作物で、主に家畜の飼料として利用されているが、バイオマス資源作物としても有望である。不耕起栽培への適性も高く、密植でき、夏期の高温下で速やかに成長するため、雑草との競合に強く、播種時期を高温期に設定することで耕作放棄地や原野等においても除草剤を使用せずに栽培が可能と考えられる。そこで耕作放棄地や原野等での除草剤を使わないスーダングラスの不耕起栽培技術を開発する。

成果の内容・特徴

  • スーダングラスを5月下旬に播種すると播種後26日目の被度は約70%であるのに対し、7月中旬の播種では播種後26日目の被度は約90%となり、被陰効果が高い。また雑草の被度は5月下旬播種では播種後52日目に無くなるが、7月中旬播種では40日目に無くなり、播種時の気温が高いほど雑草抑制効果が高い(図1)。
  • ヨシ、セイタカアワダチソウが優占する河川敷(図2)において刈払いを行い、作溝型の不耕起播種機を用いて条間30cm、播種量6kg/10aで4月下旬、5月下旬、8月上旬に条播すると、収穫時の雑草量は4月区と比較して、5月区で約40%、8月区で約5%と低く、前植生を刈払い、5月下旬以降に播種することで雑草を抑制できる(表1図2図3)。
  • 総乾物収量は出穂前に収穫した4月区は268kg/10a、5月区では659kg/10a、乳熟期まで成長させた8月区では1407kg/10aとなり、前植生の刈払いを行い、5月下旬以降に条間30cm以下でスーダングラスを条播することでヨシ、セイタカアワダチソウ等が繁茂する原野においても除草剤を使用せずにスーダングラスの不耕起栽培が行える(図3)。

成果の活用面・留意点

  • 暖地の原野、耕作放棄地等でのスーダングラスの不耕起栽培に活用できる。
  • 原野等で栽培を行う際には、事前に土壌診断を実施し、適切な施肥設計を行う。

具体的データ

図1 スーダングラス「HSK-1」の播種時期別の被度の推移(2009年熊本県合志市)

図2 スーダングラス栽培前後の状況

図3 スーダングラス乾物収量と雑草乾物重量

表1 河川敷(長崎県本明川河口付近)でのスーダングラス不耕起栽培試験区の設定

その他

  • 研究課題名:地域条件を活かした健全な家畜飼養のための放牧技術の開発
  • 中課題整理番号:212d.4
  • 予算区分:基盤、委託事業、委託(バイオマスプロ)
  • 研究期間:2007~2009年度
  • 研究担当者:加藤直樹、佐藤健次、服部育男、原口暢郎、吉川好文、小荒井晃、久保田哲史