新品種の普及および産地化へ向けたコンソーシアムの形成・支援方策

要約

新品種を効果的に普及させ、産地化・商品化を推進するには、農商工の異業種連携によるコンソーシアム形成が有効である。コンソーシアムは、コーディネーターによる新品種の効果的なプロモーション、マッチング機会の提供および橋渡し活動により形成する。

  • キーワード:コンソーシアム、新品種、マッチング、異業種連携、コーディネーター
  • 担当:九州沖縄農研・異業種連携研究チーム
  • 代表連絡先:電話096-242-7697
  • 区分:九州沖縄農業・フードシステム
  • 分類:技術及び行政・普及

背景・ねらい

新品種を開発した後の普及および産地化を進めるために、農商工等の異業種連携が重要となっている。異業種連携とは、農業者、食品製造企業、販売企業、その他企業等が相互に信頼関係を構築し新商品開発や産地作りを目標に、共創的に結びつく状況をいい、この考えに基づき農商工連携や6次産業化などの政策が推進されている。そこで、研究機関や行政機関が新品種を効果的に普及し産地化および企業等による商品開発を促進する手段として、コンソーシアムの形成・支援方策を提示する。

成果の内容・特徴

  • 新品種の開発から異業種連携による普及に至るプロセスは、「新品種活用分野の業界分析」「新品種活用商品のマーケティングリサーチ」「新品種のプロモーション」「マッチング機会の提供とマッチング支援」「コンソーシアム形成および運用支援」「コンソーシアムの自立と拡大」の過程を経る(図1)。
  • 新品種の認知拡大のためには、農業生産者や実需者のニーズに合った情報を的確に提供するためのPRリーフレットの作成、産地形成並びに新商品開発の動機付けを目的としたシンポジウムの開催など、ターゲットを絞った広報活動を展開し、生産者と食品企業のマッチング機会の提供とマッチングの促進を支援することに加え、コーディネーターによるターゲット企業への直接的な売り込みを行う。
  • マッチングを促進するには、品種開発を担当する研究者やコーディネーターなどが新品種の特徴をわかりやすく説明すると共に、連携を目指す生産者、食品企業者双方の情報を的確に交換させる(図2)。
  • 新品種の生産者および加工企業が定まった場合には、各主体の役割を明確にしたうえで相互に意思疎通・情報共有が可能なコンソーシアムを形成し、産地化および商品化を同時に実現する(図2)。特に加工企業による商品販売の企画や取扱数量・価格の提示、生産者による生産量の決定など、具体的な生産・販売計画に加え、商品化のコンセプトや企業の商品企画、農業生産の不安定な要素などを、生産や商品化が始まる前に十分協議し、相互の状況を学習しておく。
  • 本支援方策により黒大豆1件、サツマイモ3件のコンソーシアムを形成し、黒大豆では4年間で38haの産地形成および黒大豆新商品の商品化を実現した。

成果の活用面・留意点

  • コーディネーターは作目や新品種の栽培上の特徴、政策的特徴を十分把握しておく。
  • 具体的には「クロダマル産地化支援・直接取引支援マニュアル」2010年九州沖縄農業研究センター発行等が参考となる。
  • 本支援方策は、公的機関のコーディネーターの活動である点に留意する。

具体的データ

図1 新品種活用によるコンソーシアムの形成・拡大プロセス

図2 コンソーシアムモデル例と各主体に対するコーディネーターの活動内容

(後藤一寿)

その他

  • 研究課題名:地域の条件を活かした水田・畑輪作を主体とする農業経営の発展方式の解明
  • 中課題整理番号:211a.5
  • 予算区分:基盤、委託プロ(加工)
  • 研究期間:2006~2010 年度
  • 研究担当者:後藤一寿
  • 発表論文等:1)後藤(2007)食農と環境、(4):72-76
                      2)後藤(2011)農業経営通信、(247):6-7
                      3)後藤(2011)農村経済研究、29(1):30-38