機能成分高含有農作物・加工食品に対する消費者の認知状況および摂取意向

要約

健康志向の高い消費者の94.6%が機能成分高含有農作物・加工食品の摂取を希望しており、栄養成分や機能成分の高さに魅力を感じている。一方、安全性等に対する不安もあり、有効成分の安全性評価結果並びに成分含有量保証などを積極的に行う必要がある。

  • キーワード:マーケティングリサーチ、機能成分高含有農産物、インターネット調査
  • 担当:九州沖縄農研・異業種連携研究チーム
  • 代表連絡先:電話096-242-7697
  • 区分:九州沖縄農業・フードシステム
  • 分類:技術・参考

背景・ねらい

消費者の健康志向の高まりと、分析技術・育種技術の高度化により、健康機能性成分の含有を高めた農作物の開発が進められている。これら農作物は、機能性食品の原料となったり、新商品開発を進める農商工連携のキーテクノロジー(新品種素材)として活用されたりし、注目を集めている。特に、食と健康を強く意識する消費者に支持されていることが想定されるこれら新品種の認知、および市場拡大が求められている。そこで、機能成分高含有農作物・加工食品に対する消費者の認知状況を明らかにする。

成果の内容・特徴

  • 調査対象者の認知、機能成分の内容を得た上での関心度、および摂取意向が最も高い機能成分高含有農産物は「高リコペントマト」であり、何らかの機能成分高含有農作物に対して摂取意向を有する者は86.8%である(表1)。
  • 機能成分高含有農作物の摂取希望は高く、栄養成分や機能成分の高さに魅力を感じる消費者が多い。さらに、摂取方法としては加工食品よりも青果での摂取を希望しており、より自然な状態での利用を望んでいる(図1)。
  • 摂取を希望しない消費者は、安全性に対する不安や、遺伝子組み換え育種に対する不安、成分含有量に対する疑心が強い(図1)。

成果の活用面・留意点

  • 本調査結果は、機能成分高含有農作物の育種や生産拡大および加工食品開発の参考になる。
  • 本調査結果は、新たな食品表示制度を検討する資料となる。なお、現在の食品表示制度では、機能成分高含有農作物の効果・効能の表示は禁止されており、表示ができない点に留意する。
  • 今後、機能成分高含有農作物の作出方法や機能成分の正確な情報の提示、さらに成分保障を前提とした機能性成分表示や抗酸化力表示といった新しい指標の開発など、消費者に公正でわかりやすい情報伝達方法の検討が必要である。

具体的データ

表1 機能成分高含有農作物の認知・関心・摂取意向

図1 機能成分高含有農作物・加工食品の摂取意向と理由

(後藤一寿)

その他

  • 研究課題名:地域の条件を活かした水田・畑輪作を主体とする農業経営の発展方式の解明
  • 中課題整理番号:211a.5
  • 予算区分:基盤
  • 研究期間:2009 年度
  • 研究担当者:後藤一寿、沖智之、須田郁夫
  • 発表論文等:後藤ら(2010)フードシステム研究、17(3):159-163