製糖工場の効率的な運営を支援するさとうきび生産のシミュレーター

要約

さとうきび新品種の導入や製糖工場の稼働計画の策定を支援するシミュレーターである。新品種の単収や株出し率、糖度の推移などの技術的な条件を考慮し、さとうきび生産の条件変化に対応した製糖工場の効率的な運営方法を検討できる。

  • キーワード:シミュレーション、システムダイナミックス、地域農業モデル
  • 担当:経営管理システム・開発技術評価
  • 代表連絡先:q_info@ml.affrc.go.jp、Fax:096-242-7769、Tel:096-242-7682
  • 研究所名:九州沖縄農業研究センター・作物開発・利用研究領域
  • 分類:研究成果情報

背景・ねらい

さとうきび生産における新技術の導入では、さとうきび生産だけでなく、製糖工場への影響も把握する必要がある。したがって、単収や株出し率、糖度の改善などが可能な新品種の導入と、それに対応した製糖工場の運営管理が重要になる。そこで、新品種の導入にともなうさとうきび生産の変化だけでなく、製糖工場の運営や製造コストに及ぼす影響を評価できるシミュレーターを開発する。

成果の内容・特徴

  • さとうきびシミュレーターは、システムダイナミックのソフトウェアであるVensimを用いたアプリケーションである。1日刻みで、5年間のシミュレーションを行い、条件変化がもたらす影響を把握することができる(図1)。
  • シミュレーションにより、さとうきび生産量や粗糖生産量などが計算できる。さらに、製糖工場の規模に応じた固定費やさとうきび代金とその他の比例費を用いて、製造コストが計算できる。
  • シミュレーターは、マウス操作と数値データの入力によって簡易に利用できる(図2)。
  • 生産条件と稼働条件に現在の状況を設定すれば、現状を現行モデルとして評価できる。なお、製糖工場を単位とした16地域の2010/2011年期については、作型別の単収、株出し率、時期別糖度といった生産条件と、製糖工場の規模や製糖開始日、稼働率などの稼働条件のデータを組み込み済みであり、即座に現行モデルが利用できる。
  • 例えば、早期高糖性をもつ新品種を用いた早期収穫は、翌年の気象災害を回避し、株出し率を高めるとともに、単収が高まる。早期収穫を行うと、収穫を早めた期間での糖度は下がるが、複数年ではそれを補う製造コストの低下効果があることが検討できる(図3、4)。

成果の活用面・留意点

  • 製糖工場の担当者が、さとうきび新品種の導入評価や製糖工場の稼働計画の策定において活用できる。
  • シミュレーターを稼働させるには、Vensim Model Reader(無償)が必要である。シミュレーターは、マニュアルとともに提供できる。
  • シミュレーションを行うには、さとうきびの作型別面積、単収、株出し率、時期別糖度のデータが必要である。また製糖工場における稼働率や粗糖回収率のデータが必要である。

具体的データ

 図1~4

その他

  • 中課題名:新技術の経営的評価と技術開発の方向及び課題の提示
  • 中課題番号:114a0
  • 予算区分:交付金、実用技術
  • 研究期間:2011~2012年度
  • 研究担当者:樽本祐助
  • 発表論文等:
    1)樽本 (2011) 特産種苗、12: 126-129
    2)樽本 (2011) 農業経営通信、250:6-7
    3)樽本 (2012) さとうきびシミュレーター(パンフレット)、1-8