フタテンチビヨコバイの発生量は前年12月以降の気温・降水量に応じて変動する

要約

フタテンチビヨコバイの7~8月の発生の推移は7月1日の成虫密度と内的自然増加率との指数関数によって近似でき、発生量は前年12月と当年2月の気温、前年12月~当年3月の降水量、当年7月の気温に応じて変動する。

  • キーワード:重回帰分析、飼料トウモロコシ、ワラビー萎縮症、温暖化、内的自然増加率
  • 担当:気候変動対応・暖地病害虫管理
  • 代表連絡先:q_info@ml.affrc.go.jp、Fax:096-242-7769、Tel:096-242-7682
  • 研究所名:九州沖縄農業研究センター・生産環境研究領域
  • 分類:研究成果情報

背景・ねらい

フタテンチビヨコバイはイネ科作物にワラビー萎縮症を引き起こす害虫である。本種は熱帯起源の昆虫であるが、近年の温暖化にともなって九州中南部での発生量が増加し、この地域の飼料用夏播きトウモロコシ栽培における重要害虫となっている。本種の発生量は年毎に著しく変動するが、その変動要因は明らかとなっていない。そこで、フタテンチビヨコバイの発生量に対する気象条件の影響を調査し、前年および当年の気温および降水量をもとに7~8月の発生量を予測する関係式を作成する。

成果の内容・特徴

  • 飼料用夏播きトウモロコシにおけるワラビー萎縮症発生に深く関わる7~8月のフタテンチビヨコバイ発生量の推移は、年ごとに指数関数(式1)によって近似できる(図1)。
  • その年の7月1日時点でのフタテンチビヨコバイ推定密度(N0)は、前年12月および当年2月の平均気温との間に正の相関が、前年12月~当年3月の総降水量との間に負の相関がある(表1)。
  • 7~8月のフタテンチビヨコバイの内的自然増加率(r)は、その年の7月1日時点の推定密度との間に負の相関が、7月の平均気温との間に正の相関がある(表2)。
  • 2、3から、フタテンチビヨコバイの7月1日時点の発生量は越冬期間中の高温少雨によって増加し、その後の増加率は当年7月が高温の場合に高くなる。

成果の活用面・留意点

  • 気象データを利用したフタテンチビヨコバイの発生予察モデル開発のための基礎的知見となる。

具体的データ

図1、表1~2

その他

  • 中課題名:暖地多発型の侵入・新規発生病害虫の発生予察・管理技術の開発
  • 中課題番号:210d0
  • 予算区分:交付金、委託プロ(えさプロ、気候変動)
  • 研究期間:2004~2012年度
  • 研究担当者:松倉啓一郎、吉田和弘、松村正哉
  • 発表論文等:Matsukura K. et al. (2012) Population Ecology 54: 397-403