黒毛和種における乗駕許容行動の特徴

要約

ウシの発情持続時間は16-21時間とされるが、黒毛和種繁殖牛の牛群によっては乗駕許容行動の持続時間が1/3~1/2に短縮している可能性がある。授精適期推定には乗駕許容行動の開始時間の把握が重要となる。

  • キーワード:肉用繁殖牛、発情、乗駕許容行動、鈍性発情、発情検知
  • 担当:家畜生産・繁殖性向上
  • 代表連絡先:q_info@ml.Affrc.go.jp、Fax:096-242-7769、Tel:096-242-7682
  • 研究所名:九州沖縄研究センター・畜産草地研究領域
  • 分類:研究成果情報

背景・ねらい

ウシの受胎率の低下が問題視されて久しいが、肉用牛・乳牛ともに現在もさらに低下が続いておりその対策は喫急の問題である。この繁殖性の低下には様々な繁殖形質の変化が関与していると考えられ、近年の牛群においては発情行動の変化や生産性低下に直結する微弱発情の増加が懸念されている。
肉用繁殖牛について基礎的知見を再集積する目的で発情行動を精査し、発情行動の特徴を調べた。

成果の内容・特徴

  • 表1に示すとおり、農研機構の研究センターで飼養される黒毛和種繁殖牛群の乗駕許容行動の持続時間を調べるとB場所では平均で14.9時間であり、これまでに知られている持続時間である16~21時間の範疇にある。しかしながら、A場所での持続時間は7.3時間と著しく短縮している。
  • A場所で、過排卵誘起処置を行う際に乗駕許容行動の開始時間を基準として授精適期を推定すると良好な胚採取成績が得られる(表2)。このことは、乗駕許容行動開始のタイミングは従来どおり発情開始と一致していることを示している。
  • A場所の牛群では、乗駕許容開始後に時間経過とともに乗駕許容発現頭数は大きく減少し、開始後5.5時間後までに全体の80%以上の個体で乗駕許容行動は消失している(図)。このことから、繁殖牛群の適切な繁殖管理のためには、乗駕許容開始から早い時間内に行動を把握する必要がある。
  • 1980~1990年代の知見では肉用牛の乗駕許容行動頻度は1~6回/hrであることが報告されている。これとA場所の繁殖牛群の乗駕許容頻度(図)を比較すると、発情持続時間が短縮している牛群においても乗駕許容頻度は同等である。

成果の活用面・留意点

  • 本成果は黒毛和種繁殖牛の適正な繁殖管理のために寄与する。
  • 乗駕許容行動は、農研機構・東北農業研究センターで開発した乗駕許容センサー を用いて検知している。

具体的データ

表1~2、図

その他

  • 中課題名:受精・妊娠機構の解明と調節による雌牛の繁殖性向上技術の開発
  • 中課題整理番号:130B0
  • 予算区分:交付金
  • 研究期間:2011~2012年度
  • 研究担当者:竹之内直樹、福重直輝、志水学、阪谷美樹、伊賀浩輔
  • 発表論文等:竹之内ら(2013)日本胚移植学雑誌、35(3)97-108