主要新規需要米品種におけるセジロウンカの産卵特性の品種間差異

要約

主要新規需要米19品種のうち、「もちだわら」と「タカナリ」についてはセジロウンカの産卵数または眼点形成卵数が「ヒノヒカリ」に比べて多く、増殖率が高い。19品種のうち11品種については、殺卵反応の働きが「ヒノヒカリ」に比べて弱い。

  • キーワード:新規需要米品種、産卵数、増殖率、生体防御反応、眼点形成
  • 担当:気候変動対応・暖地病害虫管理
  • 代表連絡先:q_info@ml.affrc.go.jp、Fax:096-242-7769、Tel:096-242-7682
  • 研究所名:九州沖縄農業研究センター・生産環境研究領域
  • 分類:研究成果情報

背景・ねらい

近年栽培面積が拡大している新規需要米品種については、加工用に適した大粒性や飼料用に適した高収量性などが要求されるため、日印交雑によって育成された品種が主に栽培されている。セジロウンカでは、水稲の産卵部位に生体防御反応が起こって、卵の死亡率が高くなること(以下、殺卵反応と呼ぶ)が知られている。一般に殺卵反応はジャポニカ品種で強く、インディカ品種では弱い。また、インディカ品種の一部では産卵数が多いことも知られている。このためインディカ品種の形質を導入した新規需要米品種ではセジロウンカの増殖率が高く多発生が懸念されているが、現在栽培されている主要な新規需要米品種の調査事例はない。そこで、新規需要米品種間のセジロウンカの産卵数・眼点形成卵数と殺卵反応による卵死亡率の違いを調査する。

成果の内容・特徴

  • セジロウンカの産卵数と眼点形成卵数(生存卵数)の食用品種「ヒノヒカリ」の値に対する比率を増殖率の指標としたところ、供試した新規需要米品種は「ヒノヒカリ」より増殖率が高い、同等、低い、の3つのグループに分けられた(図1A、B)。
  • 「もちだわら」と「タカナリ」は、産卵数または眼点形成卵数が「ヒノヒカリ」に比べて有意に多く、増殖率が高い(図1 A、B)。
  • 「ミズホチカラ」、「北陸193号」、「ルリアオバ」、「はまさり」、「モミロマン」、「クサホナミ」、「モグモグあおば」については、産卵数と眼点形成卵数が「ヒノヒカリ」と同等である(図1A、B)。
  • 上記以外の10品種については産卵数または眼点形成卵数が「ヒノヒカリ」に比べて有意に少ないことから、増殖率が低い(図1A、B)。
  • 眼点形成率(眼点形成卵数/産卵数)は「もちだわら」、「タカナリ」、「ミズホチカラ」、「はまさり」、「モミロマン」、「モグモグあおば」、「タチアオバ」、「ニシアオバ」、「ホシアオバ」、「まきみずほ」、「西海飼287号」で「ヒノヒカリ」に比べて有意に高く、これらの品種では殺卵反応の働きが「ヒノヒカリ」に比べて低い(図1C)。

成果の活用面・留意点

  • 「ヒノヒカリ」に比べて増殖率が高い品種については、圃場におけるセジロウンカの多発生リスクが高いため、十分かつ早期の防除対策が必要である。増殖率が同等の品種については食用品種と同様の防除対策が必要である。
  • 「ヒノヒカリ」に比べて増殖率が低い品種であっても、殺卵反応の働きが「ヒノヒカリ」に比べて低い品種では、セジロウンカの多飛来時にはその後の多発生に注意する必要がある。
  • 「ヒノヒカリ」に比べて産卵数と眼点形成卵数が有意に少ない品種が見られたが、その理由については不明である。

具体的データ

図1

その他

  • 中課題名:暖地多発型の侵入・新規発生病害虫の発生予察・管理技術の開発
  • 中課題整理番号:210d0
  • 予算区分:交付金、実用技術、農食事業
  • 研究期間:2012~2013年度
  • 研究担当者:松村正哉、砥綿知美、松倉啓一郎、真田幸代
  • 発表論文等:砥綿ら (2013) 九病虫研会報、59:48-52