遅延蛍光計測によるダイズ種子の老化程度の評価

要約

発芽率が低下したダイズ種子では、遅延蛍光強度が高い。発芽率と蛍光強度との間には負の相関関係が認められ、遅延蛍光強度の計測によりダイズ種子の老化程度を評価できる。

  • キーワード:ダイズ種子、老化、発芽率、遅延蛍光、紫外線励起光
  • 担当:日本型施設園芸・イチゴ等野菜周年生産
  • 代表連絡先:q_info@ml.affrc.go.jp、FAX:096-242-7769、TEL:096-242-7682
  • 研究所名:九州沖縄農業研究センター・園芸研究領域
  • 分類:研究成果情報

背景・ねらい

種子は老化に伴い、発芽率が低下する。一般的に、種子の老化程度を評価にするために、発芽試験が行われるが、結果を得るのに時間を要する破壊的な検査である。一方、種子に吸水させると微弱な蛍光発光が認められ、その蛍光強度を計測することで、種子の老化程度を評価できることが示唆されている。しかし、この方法では、種子に吸水させる必要があるため、破壊的な検査であるとともに、蛍光強度が低いため、計測に時間を要する。一方、紫外線を励起光として照射すると蛍光強度が高まることが知られている。そこで、老化程度が異なると考えられるダイズ種子に紫外線を励起光として照射することにより発生する蛍光強度と老化に伴う発芽率の低下との関係を明らかにし、種子の老化程度の迅速かつ非破壊的な評価手法を開発するための基礎的知見とする。

成果の内容・特徴

  • ダイズ種子からの遅延蛍光強度は、紫外線照射後の時間の経過とともに低下するが、無包装で室温保存した種子では、密封して冷蔵保存した種子に比べ、高い値で推移する(図1)。
  • 気温 30 °C、相対湿度95%以上でダイズ種子を保存する老化促進処理を行うと、処理期間が長くなるに従って、発芽率が低下し(表1)、遅延蛍光強度は高い(図1)。
  • 密封して冷蔵保存、無包装で室温保存したダイズ種子、ならびに老化促進処理を行ったダイズ種子の発芽率(表1)と遅延蛍光強度との間には有意な負の相関関係が認められ(図2)、発芽率が低下するに従って、遅延蛍光強度は高くなる傾向にある。
  • これらの結果から、ダイズ種子からの遅延蛍光強度を計測することで、種子の老化程度を評価できると考えられる。

成果の活用面・留意点

  • 遅延蛍光の計測には、紫外線励起光光源(UV-LED、中心波長375nm、出力5mW/cm2)と遮光用シャッターを取り付けた微弱発光計数装置(C9692-03、浜松ホトニクス(株)、検出波長範囲185~650nm)を使用した。
  • 三重大学生物資源学部の実験圃場で栽培・収穫し、デシケーター内で含水率が11~12%になるまで乾燥させたダイズ「フクユタカ」の成熟種子を供試し、種子1粒ずつの遅延蛍光を計測した。
  • ダイズ種子に紫外線励起光を5秒間照射した後、遅延蛍光を計測した。励起光の照射時間を長くすると遅延蛍光強度は高くなるが、計数装置の検出上限を超える恐れがある。
  • 発芽率の調査には、遅延蛍光の計測に用いた種子とは異なる種子を用いた。
  • 発芽率90%以下での蛍光強度との関係については、さらなる検討が必要である。

具体的データ

図1~2,表1

その他

  • 中課題名:イチゴ等施設野菜の周年多収生産システムの開発
  • 中課題整理番号:141d0
  • 予算区分:交付金、委託プロ(ブランド・ニッポン6系野菜)
  • 研究期間:2003~2014年度
  • 研究担当者:壇和弘、大和陽一、今田成雄、杉江正美(浜松ホトニクス(株))
  • 発表論文等:壇ら(2014)植物環境工学、26(3):154-159