夏季の脂溶性抗酸化ビタミンと脂肪酸給与は、酸化ストレスと泌乳成績を改善する

要約

夏季高温期の泌乳牛に、脂溶性抗酸化ビタミン混合物と脂肪酸を給与することで、血漿中の過酸化脂質やラジカル代謝産物が低下するなど酸化ストレスが低減され、さらに、泌乳量及び乳脂肪生産量が増加する。

  • キーワード:泌乳牛、ビタミンA、ビタミンD、ビタミンE、脂肪酸、高温環境
  • 担当:気候変動対応・畜産温暖化適応
  • 代表連絡先:q_info@ml.affrc.go.jp、FAX:096-242-7769、TEL:096-242-7682
  • 研究所名:九州沖縄農業研究センター・畜産草地研究領域
  • 分類:研究成果情報

背景・ねらい

高温環境下の泌乳牛は、エネルギー摂取量の低下から泌乳成績が低下し、体温上昇などから同時に過度の酸化ストレス下にあることが知られている。したがって、高エネルギー飼料として脂肪酸を給与して摂取エネルギー不足を改善し、同時に、ルーメンバイパス性が高い脂溶性抗酸化ビタミン類を給与して、酸化ストレスを低減することが、高温対策として必要であると考えられる。そこで、夏季高温期における脂肪酸と抗酸化脂溶性ビタミン混合物について、その給与効果について調べる。

成果の内容・特徴

  • 夏季高温環境下(平均気温27.4°C、平均湿度67.3%)において泌乳牛6頭を無処理の対照区(TMR 飽食;TDN70.5%DM, CP12.7%DM)、脂肪酸+ビタミン区(TMR飽食+脂肪酸(C16:0 主体)300g/日・頭、ビタミンA1x106U、ビタミンD2x105U、ビタミンE1.0g/日・頭)を設定し、各3頭ずつとして、開始前と20日後に採血し、血中の酸化ストレス指標を比較する。さらに、最後の3日間の泌乳量及び主要乳成分についても比較検討する。
  • 過酸化脂質濃度は、対照区と比較して脂肪酸+ビタミン区で有意に低くなり、ラジカル代謝産物は脂肪酸区と脂肪酸+ビタミン区で対照区と比較して有意に低くなる(図1)。また、栄養状態の指標とした血糖値も脂肪酸+ビタミン区で高くなる(図1)。
  • 相対的な泌乳量は、対照区と比較して脂肪酸+ビタミン区で有意に高くなる。また、1日の脂肪酸と乳糖の生産量も脂肪酸+ビタミン区で有意に高くなる(図2)。

成果の活用面・留意点

  • ホルスタイン泌乳牛の暑熱対策技術の指針を作成する際の基礎資料となる。
  • 朝の搾乳前の平均直腸温度が39.9°C以上となる暑熱ストレスを受けている泌乳牛の成績である。
  • 使用する脂肪酸の組成は、牛乳の脂肪酸組成に影響するので牛乳中に含まれる主要脂肪酸を給与する。
  • 各経営における給与飼料管理責任者と相談の上、給与飼料全体のタンパク質、繊維、脂肪等の含量のバランスに充分留意する。

具体的データ

図1~2

その他

  • 中課題名:畜産由来の温室効果ガス制御技術の高度化と家畜生産の温暖化適応技術の開発
  • 中課題整理番号:210c0
  • 予算区分:交付金、委託プロ(気候変動対応)
  • 研究期間:2013~2014年度
  • 研究担当者:田中正仁、野中最子、神谷裕子
  • 発表論文等:田中ら (2014) 栄養生理研究会報、58(2):1-11