出穂前後の高温によるイネ紋枯病の進展が収量・白未熟粒の被害を増大させる

要約

出穂前10日から出穂後20日の日平均気温が高いと、イネ紋枯病の病斑がより上位の葉鞘へ進展(垂直進展)する。また、この期間の高温による垂直進展によって出穂期発病株率に対する収量の低下が大きくなり、かつ白未熟粒の発生が増加する。

  • キーワード:水稲、イネ紋枯病、収量、白未熟粒、垂直進展
  • 担当:気候変動対応・暖地病害虫管理
  • 代表連絡先:q_info@ml.affrc.go.jp、Tel:096-242-7682
  • 研究所名:九州沖縄農業研究センター・生産環境研究領域
  • 分類:研究成果情報

背景・ねらい

イネ紋枯病は光合成能力の低下、養水分の吸収阻害、病原菌の摂取によりイネに収量の低下、白未熟粒の発生助長(宮坂ら、2009)などの被害をもたらす。本病は高温性の病害であるため、温暖化に伴い、発生地域の拡大および被害の深刻化が懸念されている。しかし、気温の上昇によってもたらされるイネ紋枯病の発病程度と被害との関係については予測されていない。そこで、イネ紋枯病が上位葉に垂直進展する期間の温度と発病程度およびその被害との関係について解析する。

成果の内容・特徴

  • イネ品種「ヒノヒカリ」を用いて3カ年(2012~2014年)の圃場試験を実施したところ、2012年のイネ紋枯病の垂直進展は他の年より大きく、病斑高率((最上位病斑高(cm)/草丈(cm))×100)が高い(図1)。イネ紋枯病の垂直進展が起こる出穂前10日~出穂後20日の日平均気温は2012年で過去6年間(2009~2014年)の同時期の気温よりも約1°C高く、2013年は平年並み、2014年は約1°C低い(表1)。
  • 3カ年の圃場試験の出穂期発病株率と収量との関係において、2012年の出穂期発病株率に対する収量の低下は他の年より有意に大きい(図2)。
  • 3カ年の圃場試験の出穂期発病株率と白未熟粒率との関係において、2012年の出穂期発病株率に対する白未熟粒率の増加は他の年より有意に大きい(図3)。
  • 出穂期前後の高温によりイネ紋枯病の垂直進展が進むことで、収量低下および白未熟粒の被害が大きくなることを示唆している。

成果の活用面・留意点

  • 地球温暖化によるイネ紋枯病のリスクを予測する際に資する知見となる。
  • 気温以外のイネ紋枯病の発生を促進する要因については今後検討する必要がある。
  • イネ紋枯病の防除マニュアルを作成中である。

具体的データ

図1

その他

  • 中課題名:暖地多発型の侵入・新規発生病害虫の発生予察・管理技術の開発
  • 中課題整理番号:210d0
  • 予算区分:交付金、委託プロ(温暖化適応・異常気象対応)
  • 研究期間:2010~2014年度
  • 研究担当者:井上博喜、宮坂篤
  • 発表論文等:井上ら(2015)九病虫研会報、61:1-6
法人番号 7050005005207