粉質良食味で焼きいも適性が優れるカンショ新品種候補系統「九州161号」

要約

カンショ系統「九州161号」は、肉質がやや粉質の良食味系統である。上いも収量は「高系14号」よりやや劣るが、いもの形状や大きさの揃いが良い。実需者による焼きいも適性の評価が「ベニアズマ」並に高い。

  • キーワード:サツマイモ、食用、粉質、良食味、焼きいも
  • 担当:ブランド農産物開発 ・ カンショ品種開発・利用
  • 代表連絡先:q_info@ml.affrc.go.jp、Tel:096-242-7682
  • 研究所名:九州沖縄農業研究センター・畑作研究領域
  • 分類:研究成果情報

背景・ねらい

これまで青果用カンショの主力品種は「ベニアズマ」および「高系14号」であったが、近年は「べにはるか」の生産が全国各地で伸びており、品種の置き換えが進みつつある。「ベニアズマ」は、粉質で良食味であるが、いもが大きくなりすぎて変形し外観が悪くなること、「高系14号」は早期肥大性で皮色が優れるが、病虫害抵抗性が十分でなく、収穫直後は蒸しいもの糖度が低いことなどの短所を有する。実需者からは粉質で食味や形状に優れる品種への要望があるため、現在普及している肉質がやや粘質の「べにはるか」とは食感の異なる、粉質の良食味品種を育成する。

成果の内容・特徴

  • 「九州161号」は、蒸しいもの肉質がやや粉質で食味が優れる「九系96013-11」(母)と外観および食味が優れる「べにまさり」(父)を2002年に交配し選抜した系統である(図1)。
  • いもの形状は"紡錘形"で、形状および大小の揃いは"やや整"、外観は"やや上"と「高系14号」より優れる(表1)。
  • 蒸しいもの食味は"やや上"で、肉質は"やや粉"である。糖度は「高系14号」を上回るが、調理後の黒変はやや多い(表1)。
  • 育成地における上いも重は「高系14号」よりやや少ない。上いも1個重は「高系14号」より軽く、1株当たりの上いも数は多い(表2)。
  • サツマイモネコブセンチュウ抵抗性および黒斑病抵抗性は"やや強"である。萌芽性は"やや良"、貯蔵性は"易"でいずれも「高系14号」より優れる(表2)。
  • 焼きいもの色調は"黄色"、肉質は"やや粉~粉"で、食味は"上"であり、焼きいも適性は"上"と「ベニアズマ」並に優れる(表3)。

成果の活用面・留意点

  • 茨城県鉾田市および熊本県大津町の一部生産者が栽培する見込みである。
  • 立枯病抵抗性が"やや弱"なので、同病害の多発地帯では防除に努める。
  • 蒸しいもの調理後黒変がやや多い。

具体的データ

図1

その他

  • 中課題名:高品質・高付加価値で省力栽培適性に優れたカンショの開発
  • 中課題整理番号:320b0
  • 予算区分:交付金
  • 研究期間:2002~2015年度
  • 研究担当者:甲斐由美、高畑康浩、小林晃、境哲文、吉永優、片山健二、中澤芳則、熊谷亨、藤田敏郎
  • 発表論文等:品種登録出願申請手続き中(機構本部へ書類提出済み)