低酸素ガス置換包装による青果物の品質保持

要約

青果物の密封包装を開始する時、その容器内を低酸素状態にしてから貯蔵すると、低酸素状態を数日間持続できた。また、この包装方法で低酸素状態を保持できる包装フィルムの透過度の範囲は、既に普及している呼吸抑制(MA)包装用包材に比較して、2~3倍程度広くなり、種々の透過度のフィルムで、品質保持の延長効果が期待できる。

  • 担当:農業研究センター・プロジェクト研究第4チーム
  • 連絡先:0298-38-8817
  • 部会名:総合研究
  • 専門:加工利用
  • 対象:青果物
  • 分類:研究

背景・ねらい

青果物の流通技術として、呼吸抑制(MA)効果を利用した密封包装が実用化されている。しかし、輸送時間が短い近郊産地の青果物や花き等の容積に比べて軽量のものでは、内部があらかじめ設計した酸素・二酸化炭素濃度に到達しMA状態になる前に袋から取り出される可能性が高い。また、一つの青果物の包装には一種類のフィルムで対応できないかとの流通現場からの要望もある。 そこで、青果物の呼吸抑制による品質保持効果が短期間に現れ、しかも多様な青果物の呼吸量に対応可能なフィルム密封包装方法を開発するため、包装容器内を低酸素状態にしてから密封する方法を検討した。本研究は、高品質流通システムの確立に資する技術を開発するための一環である。

成果の内容・特徴

  • 透過度が異なる種々のフィルム(酸素透過度2千~約7万ml/m2・気圧・日)に青果物を入れ脱気し、窒素ガスを注入して酸素濃度を約2%に調整後、密封包装(低酸素包装)して貯蔵した(20°C)。
    ・開始時の低酸素状態を数日間持続できた。(図1)
  • 低酸素包装でその低酸素状態を持続できる包材フィルムの透過度の範囲を、MA包装が成立可能な範囲と比較した。
    ・MA包装の場合は、使用できるフィルム(H-4・5、M-5)の酸素透過度の範囲は、4千~1万ml/m2・気圧・日であった。(表1)
    ・低酸素包装の場合に使用可能なフィルム(H-3・4・5、M-3・4・5・6、L-1・2、OPPフィルム)の酸素透過度の範囲は、2千~2万ml/m2・気圧・日と、MA包装の場合に比較して、広くなった。(表1、図2)
  • 微細孔フィルムによるMA包装の場合には、青果物の呼吸で内部が低酸素・高二酸化炭素状態になるが、低酸素包装では、選択透過性フィルムのように、その内部が低酸素・低二酸化炭素状態になった。(図1)
    ・炭酸ガス障害を回避できる。
  • 青果物を封入するとき袋内空間をできるだけ少なくしただけの脱気状態のまま貯蔵を開始する脱気包装を行った。
    ・内部残存ガスは空気のため、呼吸抑制も起こらず、その内部の酸素はすぐ消費されるため、透過度の高いフィルム以外は、内部が嫌気状態(酸素濃度1%以下)となった。(表1)
  • 低酸素包装とMA包装により同じフィルムで貯蔵した青果物中の、品質劣化の指標物質と考えられるL-アスコルビン酸含量の変化を調べた。
    ・低酸素包装の方が、MA包装や無包装のものより、その減少が2割以上抑えられた。(図3)

成果の活用面・留意点

  • 低酸素包装に使用する包材フィルムは、包装設計で計算された包装資材の透過度を中心に絞り込み、個々の青果物でその品質保持効果を確認してから選択する必要がある。
  • 開始時の酸素濃度は、内部が嫌気的になりやすい大きな青果物や低酸素状態で代謝異常が起こり易いものでは、異味や異臭が生成する場合もあるので、個々の青果物で確認する必要がある。
  • 低酸素包装を効率的に行うには、自動包装システムの中に密封包装容器内を低酸素状態にする装置を組み込む 必要がある。

具体的データ

表1:種々の透過度のフィルムによるカイワレダイコンの低酸素包装とMA包装の比較(20°C貯蔵)
表1:種々の透過度のフィルムによるカイワレダイコンの低酸素包装とMA包装の比較(20°C貯蔵)

 

図1:低酸素包装およびMA包装したカイワレダイコン包装容器内の酸素・二酸化炭素濃度の変化(20°C貯蔵)
図1:低酸素包装およびMA包装したカイワレダイコン包装容器内の酸素・二酸化炭素濃度の変化(20°C貯蔵)

 

図2:低酸素包装したトマト包装容器内の酸素濃度の変化(20°C貯蔵)
図2:低酸素包装したトマト包装容器内の酸素濃度の変化(20°C貯蔵)

 

図3:包装方法の違いによるL-アスコルビン酸含量の変化
図3:包装方法の違いによるL-アスコルビン酸含量の変化

 

その他

  • 研究課題名:新しい青果物鮮度保持システムの開発
  • 予算区分 :経常
  • 研究期間 :平成8年度(平成4年~8年)