抵抗性トマトを加害するネコブセンチュウ系統の出現要因

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要約

ネコブセンチュウ抵抗性トマトに強い病原性を示すネコブセンチュウの抵抗性打破系統は、施設栽培の抵抗性トマト連作地帯でのみ検出される。その出現には高温条件下の抵抗性トマトの連作が関与する。

  • 担当:農業研究センター・病害虫防除部・線虫害研究室
  • 連絡先:0298-38-8839
  • 部会名:生産環境
  • 専門:作物虫害
  • 対象:果菜類
  • 分類:研 究

背景・ねらい

近年、抵抗性トマト品種(抵抗性遺伝子Mi geneをもつ)を加害するネコブセンチュウが全国に出現し、抵抗性品種を用いたネコブセンチュウの防除が困難になっている。そこで、これら抵抗性打破ネコブセンチュウの発生状況を把握し、それらの出現要因を解明することによって、今後の抵抗性品種の利用法の参考とする。

 

成果の内容・特徴

  • 日本各地から採集したネコブセンチュウ3種(サツマイモ、アレナリア、ジャワ)計100個体群(調査地点)を、抵抗性トマト品種「桃太郎」に接種し、2期幼虫500頭接種当たりの卵のう形成数(=成熟線虫数)を調査した。その結果、多数の卵のう形成(感受性品種に接種した場合と同程度)が認められる「抵抗性打破系統」が10個体群、卵のう形成数が抵抗性打破系統より有意に少ない「弱病原性系統」が4個体群検出され、86個体群は、抵抗性品種では卵のうを形成しない、普通系統であった(図1)。
  • すべての抵抗性打破系統は抵抗性トマトの連作歴のある施設栽培圃場から検出されたが、弱病原性系統については抵抗性トマトの栽培歴のない圃場からも検出された。
  • ネコブセンチュウ普通系統10個体群を抵抗性トマトに接種し、30°Cの高温条件で栽培すると、すべての個体群は少数の卵のうを形成し、わずかな次世代幼虫を得た。この高温条件で2~6世代継代したところ、3個体群については常温(25°C以下)でも、抵抗性トマトに対しわずかに卵のうを形成した。さらに、これら3個体群を25°Cで抵抗性トマトを用いて継代し続け、卵のう形成数が徐々に上昇することを確認した(図2)。このうち1個体群の卵のう形成数は10世代目前後に抵抗性打破系統と同程度に達し、以降 安定化した(図2,「MJ石垣オクラ」個体群)。すなわちこの試験により、普通系統が抵抗性打破系統に変化することが確認できた。

成果の活用面・留意点

抵抗性トマトの栽培歴がないネコブセンチュウ発生圃場では、既存の抵抗性品種の利用は当面有効である。しかし、抵抗性トマトを長期間連作した圃場では抵抗性打破系統が出現する可能性があるため、栽培終了時には毎回根の状態をチェックする必要がある。

具体的データ

図1:野外から分離したネコブセンチュウ各個体群の抵抗性トマトに対する卵のう形成(2期幼虫500頭接種、25°C、60日後の卵のう数、4反復平均値±S.D.)
図1:野外から分離したネコブセンチュウ各個体群の抵抗性トマトに対する卵のう形成(2期幼虫500頭接種、25°C、60日後の卵のう数、4反復平均値±S.D.)

 

図2:抵抗性打破系統に変化した3個体群の卵のう形成数の、世代経過ごとの変化(2期幼虫500頭接種、25°C、60日後の卵のう数、4反復平均値±S.D.) *は5世代目までの結果
図2:抵抗性打破系統に変化した3個体群の卵のう形成数の、世代経過ごとの変化(2期幼虫500頭接種、25°C、60日後の卵のう数、4反復平均値±S.D.) *は5世代目までの結果

 

その他

  • 研究課題名:ネコブセンチュウ系統間の生理生態的差異の解明
  • 予算区分 :経常
  • 研究期間 :平成10年度(平成9年~11年)