水稲条間における亀裂の形状を支配する要因

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要約

水稲条間の亀裂は、稲の蒸散により条に沿う方向に誘起され、また、その傾向は代かきを強く行うほど高められる。条間を60cmに広げると、条間が30cmの場合より幅の広い亀裂が疎らな間隔で分布するようになる。

  • 担当:北陸農業試験場・水田利用部・水田整備研究室
  • 連絡先:0255-26-3233
  • 部会名:営農・作業技術
  • 専門:農地整備
  • 対象:農業工学
  • 分類:研究

背景・ねらい

重粘土水田においては、亀裂が圃場の排水に大きな役割を果たしている。そのため、排水に有効な亀裂の発生を制御する技術の開発が望まれている。そこで、営農的に制御が可能な条間隔、代かき回数などの要因により亀裂の発生がどのように影響されるのかを明らかにする(表1)。

成果の内容・特徴

  • 亀裂の方向性に対しては、数値化された亀裂画像の骨格の方向性に各部の面積の重みを持たせた指標「方向指数」を考案し解析に用いた。この指標を用いると、方向性は0(条に垂直なもののみの場合)~100(条に沿った亀裂のみの場合)の間の数値で表される(図1)。
  • 亀裂の散在性に対しては、亀裂の外縁部の総延長を亀裂の面積で割った値をその指標とした。この指標は、総面積が同一の亀裂でも細長いものや屈曲度の高いものが多ければ高い値となり、幅の太い単純な形状のものが多ければ小さい値となる(図1)。
  • 亀裂は、稲の蒸散により条に沿う方向のものが卓越し、また、代かき回数が増加するほどその傾向が強くなる。このような亀裂の方向性に対して、蒸散の有無は特に重要な要因である(表2)。
  • 条の間隔を60cmまで広げると、条間隔が30cmの時より幅の広い亀裂が間隔をあけて疎らに形成されるようになる。(表3)。

成果の活用面・留意点

  • 暗渠や地表排水などの圃場排水システムとの連絡性を考慮しながら、局所的に条間を拡大するなどの方法による重粘土水田の簡易な排水性向上技術の開発に活用できる。
  • 圃場を乾燥させる時期により、水稲の根系の発達や蒸散量が異なるため、亀裂の発達の仕方にも違いが現れる点に注意が必要である。この実験は8月中旬に落水し、圃場を乾燥させることにより行われた。
  • 地表面の亀裂形状は、作土層下方においても面積は漸減するものの維持されており、土層全体の亀裂の特徴を反映しうるものである。

具体的データ

表1.試験区の設定および測定データ図1.亀裂の形状とその指数の例

 

表2.方向指数に関する分散分析結果

 

表3.周長面積比に関する分散分析結果

 

その他

  • 研究課題名:重粘土水田における亀裂の形成を支配する要因の解明
  • 予算区分:経常
  • 研究期間:平成10年度(平成8~10年度)
  • 発表論文等:準備中