農業環境モニタリングのためのサギ類個体数推定法

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要約

航空調査と地上調査の組み合わせによって、農耕地に普通に見られる大型捕食性鳥類であるサギ類の広範囲での個体数を高精度で効率的に推定できる。

  • キーワード:農業環境、モニタリング、指標生物、サギ類、個体数推定、航空調査
  • 担当:中央農研・耕地環境部・鳥獣害研究室
  • 連絡先:0298-38-8825
  • 区分:共通基盤・病害虫(虫害)
  • 分類:科学・普及

背景・ねらい

サギ類は農耕地や河川などで魚やカエル、昆虫などの多様な餌生物相に支えられる高次捕食者であり、絶滅に瀕しているトキやコウノトリと近縁にもか かわらず、今日でも平野部に普通に見られる大型鳥類であるため、広域的な環境指標として有望である。 我が国では餌や採食場所が少しずつ異なる6種のサギ類が集団(コロニー)で繁殖する。そこでの種別個体数調査はこれまで専門家でも困難であり、都道府県や 調査会社等でも効率的に実施できる汎用的調査方法の開発が求められてきた。

成果の内容・特徴

  • 航空調査により短時間で広域のコロニーを探索できる。セスナ機に調査員2名が乗り、調査対象範囲を2~3km間隔で飛行し、各調査員が真下から左右各1.5km幅でコロニーを探索する。飛行高度は約250m、時速は約150km/hが適当である。
  • 発見したコロニーについて、高度150m前後から全体を分割撮影する。撮影には200~400mm程度の望遠レンズ付き35mmオートフォーカス カメラとISO400程度の高感度フィルムが使いやすい。その航空写真をプリントし、ゴイサギは無視してシラサギ類4種について種を区別せずに総数を数え る(図1)。可能ならアオサギも数える。
  • 以上の航空調査には約80km×60kmの範囲で4日を要する。6月中旬以降の調査では大きくなった雛が繁殖個体と区別できなくなるため、5月下旬~6月上旬が調査適期である。
  • 各コロニーを訪れ、2地点で各30分間コロニーから出発するサギ類を種別に数えて種構成を推定する。図2に例を示したように、5月下旬~7月下旬なら構成比はおおむね安定していたので、調査はこの間に順次行えばよい。
  • 航空調査によるシラサギ類総数と地上調査による種構成比から種別個体数が推定できる。例として、茨城県南部とその周辺の調査範囲内では19コロニーが発見され、6種の種別総繁殖個体数が推定できた(図3)。

成果の活用面・留意点

  • コロニーの探索については、農業環境についての啓蒙普及も兼ねて、セスナ機によらずに多人数による地上調査で実施することも可能である。
  • 航空調査と写真上でシラサギ類を数える作業には特別の技術は必要ないが、地上での出発数調査ではサギ類の種をすばやく識別できる調査者が必要である。
  • サギ類6種の餌等の違いについては、次の文献等を参照されたい。 藤岡正博(1998)サギが警告する田んぼの危機.Pp.34-52,江崎保男・田中哲男(編)『環境復元と生物群集-生物群集から水辺環境を考える』,朝倉書店,東京。

具体的データ

図1.サギ類コロニーの航空写真

 

図2.調査時期による種構成変化の例

 

図3.サギ類コロニーの分布

 

その他

  • 研究課題名:鳥類集合地の時空間的動態に関する研究
  • 予算区分:環境省・地球環境
  • 研究期間:1999~2001年度
  • 研究担当者:藤岡正博、吉田保志子、徳永幸彦(筑波大学)