土壌フィルターを用いたロングマット苗の根の伸長阻害防止

要約

水稲ロングマット水耕育苗において、あらかじめ種子消毒してある購入種子を用いた場合でも、育苗装置に土壌フィルターを取り付けることにより、根の伸長阻害を軽減し、巻取り可能な苗マットを作ることができる。

  • キーワード:水稲ロングマット水耕育苗、種子消毒、根、伸長阻害、土壌フィルター
  • 担当:中央農研・関東東海総合研究部・総合研究第2チーム
  • 連絡先:0298-38-8822
  • 区分:関東東海北陸農業・関東東海・水田畑作物、関東東海北陸農業・関東東海・総合研究
  • 分類:技術・普及

背景・ねらい

移植栽培の省力化技術として期待されるロングマット苗の育苗・移植では、育苗は水耕の循環養液中で行われるため、病害発生の助長される可能性もあり、種もみ消毒は必須となっている。しかし、種子消毒剤の中には、根の伸長阻害を示す剤が含まれ(平成12年 成果情報)、これらの薬剤を使って消毒済みで市販されている種もみもある。このような購入種子を用いた場合でも、正常に苗が巻き取れるように、根の伸長阻害を軽減する方法を明らかにする。

成果の内容・特徴

  • 種子消毒剤によって根が短くなった苗でも、圃場に植え付ければ、無消毒の苗と同様に順調に活着し生育する(表1)。しかし、根が短いほどマット強度は弱くなり、根長4cm以下では、不織布から苗が抜け落ちるため、巻取り作業が困難になる(図1)。
  • 根の伸長阻害を抑制するため、浸種の時に種もみを流水中にさらしても、その効果は概して低い(表1)。
  • ロングマット水耕育苗装置の水尻に、図3のように、育苗培土を不織布などで包み、フィルター(土壌フィルター)として取り付け育苗することで、根の伸長阻害を防ぐことができる。培土量は、肥料入り育苗培土なら1ベッド当たり670g以上が適当である(図2)。
  • 土壌フィルターを用いた場合でも、本田でのばか苗病に対する種子消毒剤の防除効果は低下しない(図4)。

成果の活用面・留意点

  • 根の伸長阻害や土壌フィルターの効果は、種子消毒剤や培土の種類等で異なる。このため実際の場面では、種もみの流水処理と組合せるとともに、培土量などを前もって確かめる。また、根の伸長には水温の影響も大きく、育苗中は適切な温度管理に心がける。
  • 購入種子などあらかじめ種子消毒してある種もみを、ロングマット水耕育苗に使う場合にのみ、本方法を適応する。それ以外の種もみの場合は、温湯消毒法か根の伸長阻害の少ない剤で消毒する(「ロングマット水耕苗の育苗・移植技術マニュアル(農研センター)」参照)。

具体的データ

表1 種子消毒剤による根の伸張阻害と苗の活着

 

図1 種子消毒剤による根の伸長阻害と苗マットの引張強度の関係 図2 土壌フィルターによる根の伸長阻害の軽減効果

 

図3 土壌フィルターの取り付け方法 図4 本田におけるばか苗病発病株率

その他

  • 研究課題名:水耕苗の生理的特性解明と高品質育苗技術の開発
  • 予算区分:21世紀プロ7系
  • 研究期間:2001~2003年度
  • 研究担当者:北川 寿、小倉昭男、白土宏之、屋代幹雄、宮坂篤
  • 発表論文等:北川ら(1999) 日作関東支部会報14:38-39.