フェニトロチオンは水稲乾田直播における鳥用忌避剤として有効

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要約

種籾をフェニトロチオン乳剤(MEP50%)100倍希釈液に浸漬して播種すると、キジバト、スズメに対し、既登録忌避剤のチウラムと同等程度の食害防止効果がある。

  • キーワード:フェニトロチオン、水稲乾田直播、キジバト、スズメ、忌避剤、鳥害
  • 担当:中央農研・耕地環境部・鳥獣害研究室
  • 連絡先:電話029-838-8925、電子メールnarc-seika@naro.affrc.go.jp
  • 区分:共通基盤・病害虫(虫害)
  • 分類:技術・参考

背景・ねらい

水稲直播栽培では、播種後の鳥害が大きな問題であり、低コストで省力的な防除手段として忌避剤への期待は大きい。しかし、水稲に使える忌避剤は有効成分で1種類しかなく、その魚毒性はC類であることから、これまでの室内試験結果から有望であったフェニトロチオン(平成12年度研究成果情報・総合農業・生産環境部会)の乾田直播における鳥害防止効果を検討する。

成果の内容・特徴

  • フェニトロチオン乳剤(MEP50%)100倍希釈液に72時間浸漬した種籾は、全く食害を受けない防鳥枠内の苗立数に対し85%以上の苗立割合を示し、既登録忌避剤のチウラムと同等程度の効果をもつ(図1)。
  • フェニトロチオン処理に、着色(朱墨)または苦味(サッカロースオクタアセテート)の識別剤を添加した場合は、鳥は処理籾のみを忌避するのに対し、識別剤なしでは無処理区の種籾の食害も少なくなる(図1)。これは、識別剤なしでは鳥がフェニトロチオン処理の有無を区別できずに、全てが処理種籾と判断して両方を忌避するためと考えられる。
  • 1000倍希釈液72時間浸漬では食害防止効果がなく、着色しても不十分である(図1)。

成果の活用面・留意点

  • フェニトロチオンの魚毒性はB類で、C類のチウラムに比べて使用場所の制約が少ない。種籾1kgあたりのフェニトロチオン使用量は約5gで、チウラム80%水和剤の浸漬処理(適用種:スズメ)での使用量80gに比べて大幅に少なく、チウラム40%フロアブル剤の塗沫処理(適用種:スズメ、ハト、キジバト、カラス、カワラヒワ)での使用量約8gと比べてもADI(1日許容摂取量)換算で1/3となる(浸漬処理では薬剤を1リットルの水で希釈し1kgの種籾に使用するとして計算)。
  • フェニトロチオン(MEP)は鳥用忌避剤としては登録されていないため、試験研究目的以外で用いてはならない。また、イネシンガレセンチュウ対策の登録使用方法(1000倍希釈液に6~72時間浸漬)の10倍濃度であるため、実用化には適用拡大ではなく新たな手続きが必要である。
  • 湛水直播のカモ害およびダイズのハト害対策についても圃場試験を行い、忌避効果の不足や作物への薬害とみられる症状のために活用の見込みが低いことを確認している。

具体的データ

図1.食害を受けない防鳥枠内の苗立数を100 とした苗立割合

その他

  • 研究課題名:種子処理忌避剤としてのフェニトロチオン利用技術の開発
  • 課題ID:03-05-05-*-02-04
  • 予算区分:交付金
  • 研究期間:2002~2004年度
  • 研究担当者:吉田保志子、百瀬 浩、山口恭弘、藤岡正博(現筑波大学)