流通過程でのロット形態の変更に対応した流通履歴データベース

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要約

農産物の流通履歴、特にロット形態の変更を効率的に記録し照会できるデータベースである。流通過程におけるイベントのIDと、関係するロットのID、地点のID、時刻を関連付けてデータベースに記録することで、分割・統合の回数に関わらず追跡・遡及が可能となる。

  • キーワード:流通履歴、データベース、トレーサビリティ、識別番号、イベント
  • 担当:中央農研・農業情報研究部・モデル開発チーム、関東東海総合研究部・総合研究第4チーム
  • 連絡先:電話029-838-8973、電子メールsugak@naro.affrc.go.jp
  • 区分:共通基盤・情報研究、共通基盤・総合研究
  • 分類:技術・参考

背景・ねらい

消費者に対して農産物の信頼性を保証するために、農産物における生産履歴・流通履歴の記録とそれによるトレーサビリティ確立が求め られている。農産物流通において、バーコードやICタグなどの識別媒体の添付によってロット(識別単位)を識別し、流通履歴の記録を行うシステムはすでに 開発されている。しかし、農産物は流通過程においてロットの分割や統合といったロット形態の変更が多く、その前後でロット間の対応を的確に記録し、かつ簡 便に記録データから追跡・遡及できる仕組みは十分に確立されていない。そこで、分割・統合等のロット形態の変更に対応し、より効率的な流通履歴の記録と照 会が可能な流通履歴データベースを開発する。

成果の内容・特徴

  • この流通履歴データベース(以下、DB)の特長は、多様な商品流通形態でのトレーサビリティのために、物流の記録に 特化して汎用的かつ簡易な設計とした点である。流通過程における入荷、出荷、分割、統合など商品の取り扱いを「イベント」という概念で総括し、各イベント に識別番号すなわちIDを付与して流通履歴記録の基本単位とする。さらに、イベントの分類を単純化して、ある地点でのロットの移動を表す「入荷」「出 荷」、ならびにロット形態の変更を表す「分割統合」を設定している。
  • 本DBのテーブル構成を図1に示す。基本となるのは「イベント記録テーブル」、「イベント・ロット記録テーブル」、「ロット記録テーブル」である。各イベントの発生時に、それに関係するロットのID、地点のID、および時刻を、イベントIDに関連付けてDBに記録する。
  • 分割統合イベントでは、その前と後におけるロットIDを前後フラグとともにイベントIDに対応付けて記録する。イベントに関係するロットは任意の個数で記録できる。なお、分割統合の派生イベントとして、複数ロットのグループ化を記録する「親子関係」を設定している。
  • 本DBによるトレーサビリティ、すなわち商品の追跡および遡及を行う手順の概要を図2に示す。DBに記録されたロットIDとイベントIDを相互に参照することで、流通過程での分割統合の回数ならびに関係ロットの個数に関わらず追跡・遡及が可能となる。
  • 本DBにもとづいて構築した流通履歴情報システムでは、記録した流通履歴データをWeb上で照会することができる(図3)。これを用いて、2005年に静岡県産の温州ミカンならびに群馬県産のレタスによる青果物トレーサビリティ実証試験を実施し、ロットの追跡・遡及が可能であることを確認している。

成果の活用面・留意点

  • 商品の流通過程において、ロットの識別媒体として固有のIDを有するバーコードやICタグを添付し、そのIDの読み取りによって流通履歴を記録する場合に、本DBを導入しやすい。
  • 商品の流通に関わる各事業者が個々のコンピュータでDBを運用し、必要に応じて事業者間でデータ交換することで、相互にデータ照会できる分散型のシステム構成も可能である。

具体的データ

図1 流通履歴データベースの基本的なテーブル構成

 

図2 流通履歴データベースによるトレーサビリティの概要図1 流通履歴データベースの基本的なテーブル構成

 

図3 流通履歴情報システムによる、実証試験における特定ロットの流通履歴データの照会例
イベントIDのリンクをクリックすると、そのイベントに関係したロットIDが一覧表示される。

 

その他

  • 研究課題名:農産物の効率的な生産・流通履歴管理システムの開発
  • 課題ID:03-04-05-01-11-05
  • 予算区分:高度化事業
  • 研究期間:2004∼2005年度
  • 研究担当者:菅原幸治、佐藤和憲