農産物直売所の地域経済への波及効果の店舗間比較

要約

農産物直売所活動が地域経済へ及ぼす効果は、地域毎の産業構造や農産物の調達、出荷構造との相互作用によって変化する。比較事例において、農産物の域内調達率が高く、直売所の活動が新規の農業生産を誘発している直売所の経済効果は、そうでない直売所の2.6倍になる。

  • キーワード:農産物直売所、地域産業連関表、経済波及効果、域内調達率
  • 担当:機構本部・総合企画調整部・研究調査室
  • 連絡先:電話029-838-8429、電子メールsenna@affrc.go.jp
  • 区分:共通基盤・経営
  • 分類:行政・参考

背景・ねらい

農産物直売所は全国的展開をみせているが、直売所がもたらす経済効果の分析は十分ではなく、便宜的に年間販売額で代替されてきた。本研究では農産物直売所が地域経済に及ぼす真の経済効果とは何かを示し、地域産業連関表を用いてその効果を計測する。
地域毎の産業構造や農産物の調達、出荷構造がもたらす影響を分析するために、年間の売上高、立地等に類似性が観察される茨城県S市と千葉県南房総地域の直売所の比較を行う。

成果の内容・特徴

  • 直売所の販売活動が地域経済に及ぼす効果を計測するため、県産業連関表をベースに市町村レベルの地域産業連関表を作成する簡易な手法を提示する(図1)。この表をもとに、直売所における農産物や手数料等を地域産業連関表(平成13年度版)における各産業部門の最終需要とみなし生産誘発効果を計測する。効果は全て販売額1億円当たりの金額である。
  • はじめに、地域の産業構造の影響をみる。そのために、「販売される農産物、農産加工品、土産物等(以下「販売農産物」とする)は全て地域内で調達され、かつ新規の農業生産活動によって生み出される」と仮定する。
    S市における誘発効果は南房総地域よりも約15%(170.1÷147.9)大きいことが示される。要因としては、S市には各種産業がある程度のバラン スかつ一定の生産規模で存在するのに対し、南房総地域では他産業とりわけ製造業部門が未発達であることが指摘できる(表1)。
  • 表1の分析で用いた仮定は、地域の実態を考慮すれば非現実的なものである。実際の販売農産物は域外から調達された り、出荷先が市場から直売所に変更されたものであることが多い。単に販売額を最終需要と考え、波及効果を計測したのでは、地域外に漏出する効果や振替効果 をカウントすることになる。これらの効果は経済効果としては不十分である。
    そこで、「地域内」に「追加的に」発生した経済活動が誘発する効果を「真の効果」とし、これを把握する。販売農産物のうち実際のデータを用いて、域内調達率と直売所活動による域内農業生産の純増分を考慮した結果が表2である。
    以上を考慮した真の経済波及効果は、南房総地域においてS市の2.6倍(68.7÷28.0)に達する。南房総地域では、年間を通した農産物供給があ り、また直売所がビワのB級品出荷等の新たな販路を生み出していること等がその要因である(表2)。

成果の活用面・留意点

  • 直売所における年間の販売額は、農産物販売の経済効果の指標として十分ではないことが示される。また本成果を用いて、直売所活動による農業外への経済効果や雇用効果も計測可能となる。
  • データの秘匿等の問題があるため、小地域を対象とすることは作業手順の上でも、また統計上でも誤差が大きい。また、ここで示した2.6倍という数値は対象とする直売所を変更することで、変動することに留意されたい。

具体的データ

図1 地域産業連関表作成フロー

 

表1 産業構造の相違と経済効果(販売額1億円当たり:百万円)

 

	表2 直売所の真の経済波及効果(販売額1億円当たり:百万円)

 

その他

  • 研究課題名:地域生産流通システムの社会経済的役割の解明
  • 課題ID:01-*-02-01-04-05
  • 予算区分:交付金
  • 研究期間:2003∼2005年度
  • 研究担当者:小野 洋、横山繁樹、櫻井清一(千葉大)、霜浦森平(千葉大)唐崎卓也(農工研)、尾関秀樹、三橋初仁(生物研)、竹田麻里(東京大)、中嶋晋作(東京大)