アルストロメリアモザイクウイルスの血清学的診断法

要約

日本のアルストロメリアから最も多く検出されるアルストロメリアモザイクウイルスについて、純化ウイルスを抗原として作製した特異的な抗血清を用いる血清学的手法によって本ウイルスを簡易に検出できる。

  • キーワード:アルストロメリア、抗血清、ウイルス病、DAS-ELISA法、DIBA法
  • 担当:中央農研・生物的病害制御研究チーム
  • 代表連絡先:電話029-838-8885
  • 区分:共通基盤・病害虫(病害)、関東東海北陸農業・関東東海・病害虫(病害)
  • 分類:技術・普及

背景・ねらい

わが国のアルストロメリアの作付け面積は約100haで、その生産額は平成17年度に約40億円であることから、重要な切り花の一つとなっている。近年、栽培現場ではウイルス感染が多く、品質低下の大きな要因となっている。発生しているウイルスの中では、一部の調査によってアルストロメリアモザイクウイルス(AlMV)の発生が多いことが報告されているが、異なる地域からの多数のアルストロメリアを用いた調査は行われていない。AlMVに対する抗血清は外国では市販されており入手は可能であるが、高価でかつ入手に時間かかるためにごく一部の利用にとどまっている。そこで、大量検定に利用できるAlMV抗血清を作製し、発生状況を調査するとともに、農家レベルでの検定普及のためにより簡易な診断法について検討した。

成果の内容・特徴

  • 現在、日本国内においてアルストロメリアで発生が認められているウイルスは9種であるが、国内主要産地の北海道、長野県、愛知県から採集した124検体のうちの82検体から何らかのウイルスが検出され、特にアルストロメリアモザイクウイルス(AlMV)が単独感染もしくは他のウイルスとの重複感染で全ての地域から高率(92.7%)に検出されることから、AlMVが国内の主要ウイルスである(表1)。
  • AlMVとキュウリモザイクウイルス(CMV)、ソラマメウイルトウイルス(BBWV)などが複数種検出される株では、株の萎縮、奇形により生育が極めて不良で(図1)、AlMVと他ウイルスが重複感染することで病徴が激しくなる危険性が高いので、AlMV感染ほ場では細心の注意が必要である(データ省略)。
  • ツルナ感染葉から純化精製したAlMVを家兎に注射してウイルス抗血清を得た。作製した抗血清は、マイクロプレートを用いるDAS-ELISA法では2千倍希釈まで(図2)、ナイロン膜を用いるDIBA法では1万倍希釈まで特異的に明瞭に反応する(図3)。

成果の活用面・留意点

  • BBWVおよびCMVは宿主範囲が広いのに対して、同様にアブラムシ媒介性のAlMVはツルナやタバコの一種に局部感染するのみで宿主範囲は極めて狭い。
  • ユリ潜在ウイルス(LSV)ではAlMVとの重複感染株での重症化は認められない
  • AlMV感染の有無の検定は、DAS-ELISA法よりDIBA法の方が簡便であり大量検定にも適しており、使用する抗血清も少量ですむ利点がある。しかし、ウイルス濃度が低いことが懸念される場合は、検出感度の高いDAS-ELISA法の方がよい。
  • 本抗血清は、他の主要なポティウイルスとは反応せず、平成21年度より日本植物防疫協会から市販されている。

具体的データ

表1 主要産地のアルストロメリアから検出されるウイルス

図1 複数種ウイルスの重複感染によるアルストロメリアの重症化 左はAlMVとCMVの重複感染、品種は「レッドベルベット」 右はAlMVとBBWVの重複感染、品種は「ティエスト」

図2 DAS-ELISA法でのAlMV感染葉粗汁液に対する抗血清の反応 (粗汁液は20倍希釈、吸光値は発色60分後)

図3 DIBA法でのAlMV感染葉粗汁液に対する抗血清の反応

その他

  • 研究課題名:IYSVやMYSV等の生物的防除技術の開発
  • 課題ID:214-d
  • 予算区分:運営費交付金
  • 研究期間:2008~2010年度
  • 研究担当者:花田 薫、藤永真史(長野県野菜花き試)、河野敏郎(日植防研)、藤晋一(秋田県立大)、福本文良
  • 発表論文等:Fuji et al.(2007) Jounal Gen Plant Pathol. 73: 216-221