転換畑土壌におけるクラスト生成リスクの高い土壌条件

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要約

転換畑土壌において、クラストの透水性は耐水性団粒平均直径が小さい土壌で低下し、乾燥時の硬度はシルト含量が多い土壌、また、酸性シュウ酸塩可溶アルミニウムが低い土壌で高まる傾向にある。クラストの硬度は結晶性粘土鉱物の組成に影響される。

  • キーワード:クラスト、土壌の理化学性、粘土鉱物、大豆、転換畑
  • 担当:中央農研・北陸水田輪作研究チーム
  • 代表連絡先:電話025-526-3236
  • 区分:共通基盤・土壌肥料
  • 分類:研究・参考

背景・ねらい

転換畑での大豆作では、出芽の良・不良が安定した収量を得るための重要なポイントである。出芽の障害となるようなクラストができやすい土壌のタイプを明らかにすることは、クラストを考慮しなければならない圃場を推定し、適切な耕起法の選択など対策を考える上で重要である。しかし、転換畑土壌を対象としたクラスト生成に関する研究は極めて少ない。そこで、全国から収集した27地点の水田作土を用い、人工降雨によるクラスト発生試験を行い、生成したクラストの性質と土壌の理化学性・粘土鉱物との関係を解析し、クラストによる発芽抑制の起こりやすい土壌条件の整理を試みた。

成果の内容・特徴

  • 生成したクラストの透水性は、耐水性団粒の平均直径が小さい(1mm以下)、すなわち団粒が不安定な土壌で低くなるものが多く、耐水性団粒は粘土含量25%付近で最も細粒化しやすい(図1)。またクラストの硬度は、シルト含量が高い土壌や、酸性シュウ酸塩可溶Al(Alo)が低い土壌で硬くなりやすい(図1)。さらに粘土含量が少なく、砂含量が高い粗粒な土壌ではクラスト表面の亀裂が生成しにくい(図1)。
  • 粘土含量15%以上の非黒ボク土において、カオリナイトまたはバーミキュライトの含量が高い土壌やスメクタイトの含量が低い土壌では生成されたクラストの硬度が相対的に高い(図2 カオリナイトのみ分散分析5%有意)。
  • 以上のことから、緻密で硬いクラストの発生する危険性の高い土壌条件としては、団粒安定性が低い(粘土含量25%付近)、Aloが低い、シルトが多い、カオリナイトまたはバーミキュライト含量が高いことがあげられる。

成果の活用面・留意点

  • クラスト発生の危険性を考慮した土壌管理が必要な土壌を抽出・予測するための基礎資料として活用できる。
  • クラストの生成には本成果の条件以外に、降雨強度、土塊分布、初期水分状態などが影響を与える。
  • 供試した土壌は、灰色低地土12点、グライ低地土9点、黄色土3点、多湿黒ボク土、非アロフェン質黒ボク土、褐色低地土各1点である。人工降雨試験では、4mm以下の風乾土を用い、時間雨量19mm/hrおよび37mm/hrの2段階で行った。
  • クラストの性質として、透水性(緻密なクラストの発達程度の指標)、硬度(硬さによる大豆出芽阻害の危険性の指標)、厚さ(形態の確認)、亀裂率(種子直上の亀裂による出芽阻害軽減の可能性の指標)を測定した。土壌の性質としては、pH、全炭素、遊離酸化鉄、交換性塩基類、CEC、リン酸吸収係数、酸性シュウ酸塩可溶酸化物、粒径組成、耐水性団粒直径、pF1.8水分、塑性限界、畑地化指数を測定・比較した。粘土鉱物は、カオリナイト、雲母粘土鉱物、緑泥石、バーミキュライト、スメクタイト、緑泥石-バーミキュライト中間体、緑泥石-スメクタイト中間体、石英の区分で測定した。

具体的データ

図1 クラストの性質と土壌の理化学性の関係

図2 クラストの硬度(1 kg バネ)と粘土鉱物ピーク強度の関係

その他

  • 研究課題名:土壌粘土鉱物の判定と土壌の砕土・水分条件の解明による大豆の出芽・苗立安定化技術の開発
  • 課題ID:211-k.4
  • 予算区分:基盤
  • 研究期間:2006~2008年度
  • 研究担当者:細川寿、小原洋(農環研)、高橋智紀(静岡農林研)、大野智史、関口哲生、吉田修一郎、田渕公清
  • 発表論文等:小原ら(2008)土壌の物理性、109:27-44