インド型超多収水稲品種「北陸193号」は寒冷地南部では遅植えすると減収する

※アーカイブの成果情報は、発表されてから年数が経っており、情報が古くなっております。
同一分野の研究については、なるべく新しい情報を検索ください。

要約

インド型超多収水稲品種「北陸193号」は、寒冷地南部においては遅植えを回避し5月上旬に移植することで多収が得られる。5月下旬以降に遅植えした場合、出穂が遅れ低温登熟条件となるため登熟歩合が低下し著しく減収する。

  • キーワード:インド型超多収水稲、北陸193号、移植時期、飼料米、エタノール米
  • 担当:中央農研・北陸大規模水田作研究チーム
  • 代表連絡先:電話025-526-3218
  • 区分:作物、関東東海北陸農業・北陸・水田作畑作
  • 分類:技術・参考

背景・ねらい

「北陸193号」は、平成20年度新潟県でエタノール米用として約300ha作付され、今後も飼料米等の用途を含めた普及が期待されている。その一方で栽培法開発は遅れており、栽培基準も暫定版に止まっている。更なる普及のためには、品種・栽培特性に関わる諸情報、中でもとりわけ安定多収に必要な情報を明確にする必要がある。本成果では、同品種の出穂期と収量性について検討し、多収確保に適した移植時期を明らかにする。

成果の内容・特徴

  • 「北陸193号」の出穂期は移植時期により大きく変化する。試験地(新潟県上越地方)での標準的な水稲移植期となっている5月15日より前に移植する場合、出穂期は8月上中旬が期待できる。この時期よりも遅く移植すると出穂期は8月下旬以降になってしまう(図1)。
  • 移植時期が遅くなると収量が低下し、その減収程度はより出穂の早い日本型多収品種「夢あおば」と比較しても著しい。4月15日以降の移植では早植えするほど多収が得られる(図2)。
  • 遅植えでの減収要因は、登熟歩合の低下によるものであり、日本型多収品種に比べ遅い移植時期での低下程度が大きい(図3)。
  • 出穂期が遅れるほど低温条件下での登熟となるが、気温低下は出穂の遅れが著しい「北陸193号」の遅植えで大きい(図4)。
  • 試験実施した4月15日移植は加温育苗が必要で低コスト性や省エネ面で問題があり、また活着期の気象条件等についてさらに検討する必要がある。これらのことから現時点では5月上旬移植が適する。なお、5月上旬移植に必要な4月育苗は露地育苗が可能である(平20年度現地実証済:1ha区画現地圃場で4月露地育苗の苗を5/4に移植、全刈収量800.2kg/10aを得た)。

成果の活用面・留意点

  • 寒冷地南部の「北陸193号」普及地帯において、多収を得るための適切な作期を判断する際の情報として活用される。
  • 北陸の食用水稲は高温登熟回避のため遅植指導されているところが多く、試験地では5月10日以降であり「北陸193号」の5月上旬植えと移植作業は競合しない。収穫は籾水分が充分低下する食用水稲収穫以降となるので収穫作業競合もない(現地実証済)。
  • 供試した苗は育苗期間30日の中苗で、株当たり3本手植え、22.2株/m2、窒素施肥量は基肥と追肥を合わせて17kg/10aである。

具体的データ

図1 移植時期と出穂期の変動

図2 水稲収量の移植時期に伴う変化

図3 全作期での登熟歩合と収量の関係

図4 移植時期別の出穂後30日積算平均気温

その他

  • 研究課題名:超多収水稲新品種・系統の作期拡大による超多収栽培法の開発
  • 課題ID:212-b.2
  • 予算区分:基盤研究費、交付金プロ(多用途水稲超多収)
  • 研究期間:2007~2008年
  • 研究担当者:松村修、大角壮弘、古畑昌巳、元林浩太、小島誠