家族経営における女性農業者のキャリア形成の要因

要約

家族経営における女性農業者のキャリア形成においては、就農時の農業知識や就農経緯に応じた学習機会を得ること、それに対応した経営内の役割分担が行なわれること、役割に応じた処遇が行われることが重要である。

  • キーワード:女性農業者、就農経緯、農業知識、キャリア形成、学習機会
  • 担当:中央農研・農業経営研究チーム
  • 代表連絡先:電話029-838-8481
  • 区分:共通基盤・経営、関東東海北陸農業・経営
  • 分類:行政・参考

背景・ねらい

家族経営における女性農業者の地位をいかに向上させるかは未だ十分達成されていない重要な課題であり、そのためには女性農業者の能力発揮を通じたキャリア形成が不可欠である。女性の場合、男性と比較した農業関連の知識・情報量の少なさや、家産の相続権をもたない場合が多いことからくる家族内の位置づけの曖昧さが、キャリア形成上の問題となっている。そこで、家族経営において能力を発揮している40歳代から60歳代の女性農業者に対する聞き取り調査を実施し、就農後の学習機会、および役割に応じた地位の確定の観点から、キャリア形成の要因を明らかにする。

成果の内容・特徴

  • 調査事例の女性農業者は、経営内での生産の一部門や、加工部門、販売部門などを自ら担当し、労務管理、販売管理等の職能を担うなど重要な役割を果たすと共に、その経営内の位置づけが明確化されることによりキャリア形成がなされている(表1)。
  • 就農時の農業知識量は、それ以前の農業経験や学習歴によって異なるが、とりわけ出身(農家か非農家か)により大きな差がある。また、就農経緯(婚姻か家業継承か)により、農地等の家産の相続権の有無等、家族における位置づけが異なる。これらの二要因により、女性農業者はA.非農家出身農家婚入女性、B.農家出身農家婚入女性、C.農家出身経営継承女性の3類型に分類できる(表1)。
  • 就農後の学習内容は、基本技術の習得と、より高度な新技術・情報習得に大別できる。基本技術の習得を最も必要とするのは非農家出身の類型Aであり、農業簿記や基本技術の習得により経営への知識を深め、既存の経営部門における役割を拡大している(表2)。
  • より高度な新技術・情報習得を通じて、女性農業者は共同経営者と呼びうる役割を経営内で担えるようになる。特に経営主とは異なる知識・情報を持つことによる経営への独自の貢献が重要である。A類型では、非農業関係の学歴や職歴の上に、さらに加工技術、販売戦略、消費者動向等の技術・情報獲得をすすめ、加工部門創設や直売所開設、また有機農業への転換などの経営展開を行っている。B類型においては、独自の情報源による新しい生産技術、あるいは加工技術や販売戦略などの情報獲得により、新たな農法の導入や新規事業の創設などの経営展開をしている。同様に就農前から農業知識をもつC類型でも、経営の多角化に関わる情報の習得が新たな経営展開に結びついている(表2)。
  • 妻の能力獲得に対応した役割分担だけではなく、役割に対応した処遇が経営主によって行われることで、女性農業者としてのキャリア形成が達成されている。特に、家産の相続権をもたない類型A、Bでは、法人化を通した処遇や家族経営協定の締結等、家族経営内の女性の貢献に応じた地位の確定や報酬・利益配分などが実施されるシステムが存立していることが、キャリア形成の要因として重要である。

成果の活用面・留意点

  • 1.女性農業者のための学習プログラムを開発する際の参考になる。0000-00-00

具体的データ

表1 就農経緯による女性農業者の類型とキャリア形成の状況

表2 就農後の学習機会獲得例と学習効果

その他

  • 研究課題名:関東・東海・北陸地域における個別経営体の総合的経営管理手法及び多様な主体間連携による地域活性化手法の開発
  • 中課題整理番号:211a.3
  • 予算区分:基盤
  • 研究期間:2006~2009年度
  • 研究担当者:原珠里
  • 発表論文等:1)原(2009)日本農業経営年報、7:77-89