簡易ELISA法による簡便・迅速なイネ縞葉枯ウイルス保毒虫検定法

要約

簡易ELISA法により精度の高いイネ縞葉枯ウイルス保毒虫検定が可能である。本手法は通常のELISA法と比較して簡便性、迅速性に優れる。また、ラテックス法と比較して、経済性、明瞭性、簡便性、検出感度に優れ、迅速性も同程度である。

  • キーワード:簡易ELISA法、イネ縞葉枯ウイルス、保毒虫検定、ヒメトビウンカ
  • 担当:環境保全型防除・侵入病害虫リスク評価
  • 代表連絡先:電話 029-838-8481
  • 研究所名:中央農業総合研究センター・病害虫研究領域
  • 分類:普及成果情報

背景・ねらい

近年、イネ縞葉枯ウイルス(RSV)が原因となるイネの縞葉枯病の発生面積が拡大傾向にあり、発生地域の防除所等においては媒介虫ヒメトビウンカのRSV保毒率の把握が求められている。媒介虫からのRSV検出法としては、経済性、結果の明瞭性、検出感度、定量性等の点でELISA法が優れるが、迅速性において従来より広く用いられているラテックス法より劣る。そこで、試料と二次抗体液を同時に処理する簡易ELISA法と簡便な虫検体処理法を組み合わせることで、これまでの方法より作業性を大幅に向上させた簡便・迅速なELISA法を開発する。

成果の内容・特徴

  • 図1の手順によりRSV保毒ヒメトビウンカを簡便かつ迅速に検出できる。本手法は、1齢幼虫から成虫まですべての生育ステージのヒメトビウンカに適用できる。
  • 虫検体の胸部をピンセットで圧搾する(図2)だけで十分な発色が得られ肉眼での判定も容易である(図3)。磨砕が必要な従来のELISA法やラテックス法と比較して検体処理が簡便である。
  • 一人の検定者が500検体の保毒虫検定を行うための所要時間は約3時間で、ラテックス法と同程度である。従来のELISA法と比較して半分の時間で結果が得られる。
  • 植物への虫媒接種試験と簡易ELISA法による検出結果の比較では、98%の個体で「イネ発病かつ簡易ELISA法で陽性」または「イネ無発病かつ簡易ELISA法で陰性」の結果となり、媒介能力のある虫を簡易ELISA法で取りこぼす事例は認められない(表1)。
  • 本手法の1検体あたりの費用は約20円(検定試薬、バッファー、マイクロプレート)で、ラテックス法の約65円(検定試薬、マイクロプレート)と比べて安価である。
  • 本手法は、信頼性、経済性、結果の明瞭性、検出感度に優れるELISA法の簡便性と迅速性を改善した方法であり、精度の高い保毒虫検定が可能である。

普及のための参考情報

  • 普及対象:試験研究機関、病害虫防除所等
  • 普及予定地域・普及予定面積・普及台数等:日本全国のイネ縞葉枯ウイルスの保毒虫検定を行う試験研究機関、病害虫防除所等
  • その他:
    1)簡易ELISA法はイネからのRSV検出にも適用できる。RSV以外のウイルス検出についての適合性は検証していない。
    2)本手法を用いた保毒虫検定マニュアルは農研機構webページで公開準備中。また、中央農業総合研究センターにおいて随時研修を実施している。

具体的データ

図1~3,表1

その他

  • 中課題名:侵入病害虫等の被害リスク評価技術の開発及び診断・発生予察技術の高度化
  • 中課題整理番号:152e0
  • 予算区分:委託プロ(気候変動)、発生予察事業
  • 研究期間:2011~2013年度
  • 研究担当者:柴卓也、杉山恵乃(茨城農総セ農研)、一木珠樹、奥田充、大藤泰雄、平江雅宏、早野由里子
  • 発表論文等:柴ら(2013)関東東山病虫研報、60: 91-93