水稲・大豆作における新たな難防除雑草の早期発見・被害軽減総合対策技術

要約

雑草イネの赤米混入被害は、水田での雑草イネの早期発見と総合対策により軽減できる。圃場周辺の帰化アサガオ類は、年3回の適期防除により大豆畑への侵入を防止できる。アレチウリ等の警戒すべき帰化雑草も早期発見と対策により被害を未然に防止できる。

  • キーワード:雑草イネ、帰化アサガオ類、帰化雑草
  • 担当:環境保全型防除・生態的雑草管理
  • 代表連絡先:電話 029-838-8481
  • 研究所名:中央農業総合研究センター・生産体系研究領域
  • 分類:過年度普及成果情報(2010、2011)

背景・ねらい

我が国の土地利用型作物生産では、近年、除草剤では防除できない新たな難防除雑草による被害が拡大している。なかでも、雑草イネによる水稲作での赤米混入被害、海外から侵入した帰化アサガオ類による大豆作での被害は極めて大きい。さらに今後、耕地に侵入し甚大な被害をもたらすと予想される帰化雑草がある。これらは既存の除草体系では防除困難なことから、現場での早期発見を促すとともに、雑草生態に基づく総合的防除技術を確立する。

成果の内容・特徴

  • 雑草イネを圃場内で早期発見するための識別ポイントは、出穂した穂の様子、籾の落ちやすさ、籾や玄米の色である(図1)。赤米混入被害を軽減するためには、雑草イネまん延防止マニュアルにある総合対策チェックリストに従い、雑草イネの種子脱落前から収穫までの抜き取りによる徹底防除、雑草イネ種子の死滅を促進する収穫後の不耕起、翌年の作付けの変更(大豆作、水稲直播栽培をしない)等を組み合わせた総合的な対策を行う。これにより、3年間でまん延を防止して被害を軽減することができる(図2)。
  • 帰化アサガオ類の大豆畑内への侵入を防止するには、大豆畑周辺だけでなく、水田も含めた畦畔等圃場周辺での早期発見と種子生産防止が重要である。6月上旬から警戒し、6月上旬、8月中旬、9月下旬の年3回は必ず防除を実施することにより、種子生産を完全に防止し(図3)、大豆畑への侵入を防ぐことができる。
  • 今後、耕地に侵入し甚大な被害をもたらすと予想される帰化雑草としてアレチウリなどがある。アレチウリが侵入した大豆畑では壊滅的な被害が出ている。警戒パンフレット(図4)に記載された各草種の形態・特徴や防除のポイントを参考にした早期発見と対策の励行により、被害を未然に防ぐことができる。

普及のための参考情報

  • 普及対象:全国の水稲生産者および大豆生産者
  • 普及予定地域・普及予定面積・普及台数等:全国
  • その他:雑草イネまん延防止マニュアル(2012)、帰化アサガオ類ほ場周辺管理技術マニュアル(2011)、警戒すべき帰化雑草のパンフレット(2011)は全国の普及センター等に配布し、被害が大きい生産現場ではこれらを用いた取り組みが行われている。上記のマニュアルと警戒すべき帰化雑草パンフレット等は農研機構のWeb上で公開している(生態的雑草管理ポータルサイトhttp://weedps.narc.affrc.go.jp)。

具体的データ

図1~4

その他

  • 中課題名:生態的雑草管理
  • 中課題番号:152d0
  • 予算区分:交付金、委託プロ(気候変動)
  • 研究期間:2009~2013年度
  • 研究担当者:澁谷知子、黒川俊二、渡邊寛明、牛木純、赤坂舞子、細井淳(長野県)、酒井長雄(長野県)、青木政晴(長野県)、船生岳人(愛知県)
  • 発表論文等:
    1) 牛木ら(2008)雑草研究 53(3):128-133
    2) 雑草イネまん延防止マニュアル(2012)
    3) 帰化アサガオ類ほ場周辺管理技術マニュアル(2011)
    4) 警戒すべき帰化雑草パンレット(2011)