大型ハーベスタによるトウモロコシ収穫事業の成立条件と酪農所得向上効果

要約

大型ハーベスタ等の利用により、大面積のトウモロコシ生産が可能であり、共同利用組織等では、6500円/10aの収穫受託料金と年間160haの稼働面積で採算を確保できる。酪農経営では、トウモロコシの増産と30kg/日/頭の多給により所得向上がはかれる。

  • キーワード:大型ハーベスタ、共同利用組織、トウモロコシ、二期作、酪農経営
  • 担当:経営管理システム・開発技術評価
  • 代表連絡先:電話 029-838-8481
  • 研究所名:中央農業総合研究センター・農業経営研究領域
  • 分類:研究成果情報

背景・ねらい

エネルギーの多くを購入飼料に依存する酪農経営方式は、輸入飼料価格の高騰、変動の続くなかで、今後の経営展開が困難になりつつある。このため、今後の日本酪農は自給飼料生産に立脚した経営へ方向転換する必要がある。トウモロコシ二期作生産は面積当たりのエネルギー生産量が大きく、トウモロコシサイレージの増産と乳牛への多給飼養は、今後有望な酪農経営モデルの一つである。本研究では、西南暖地の事例を基に、酪農家集団の大型ハーベスタ共同利用によるトウモロコシ生産体制とその成立条件、酪農経営におけるトウモロコシ多給による飼料費低減、所得向上効果を明らかにする。

成果の内容・特徴

  • 事例酪農経営は、経産牛100頭以上の多頭経営でありながら、約16haの圃場でトウモロコシ二期作(以下、二期作)を行い、搾乳牛1日あたりトウモロコシサイレージ30kgを多給するなど飼料自給率が高い。この事例では、大型ハーベスタの共同利用組織で収穫作業を行うことにより、大面積の二期作を実現している(表1)。
  • 大型ハーベスタの共同利用組織では、組合員が収穫作業に出役、共同作業を行い、1台の大型ハーベスタに対して、3台以上のダンプで収穫したトウモロコシの運搬を行う。組合の収支安定・改善を目的に、員外からの作業受託も積極的に受け入れ、年間約160haの収穫作業を実施する(図1)。
  • 大型ハーベスタは高額のため採算を確保するためには、事例地域の利用料金6,500円/10aの場合は、年間延べ160ha以上の収穫面積の確保と30日間の収穫適期の確保可能な作型が必要である。110ha程度の収穫面積の場合は、料金を8,500円以上に設定する必要がある(図2)。
  • 事例経営では、大型ハーベスタを利用した収穫作業により、トウモロコシを省力低コストで増産できる結果、生乳100kg当たりの収支は、生産費調査 (2009年度、2010年度)の100頭規模以上(都府県)の階層よりも、購入飼料費、総飼料費ともに低い水準にあり、所得は14%(2009年度)、11%(2010年度)上回る(表2)。

成果の活用面・留意点

  • トウモロコシ生産が可能な酪農団地において、大型ハーベスタの導入を検討する際の料金設定等に活用できる。
  • 大型ハーベスタによるトウモロコシ収穫の損益分岐点分析は、経費のうちハーベスタの事故による修理・修繕費は現地データをもとに設定している。故障やトラブル等、修繕リスクの設定によっては、本分析で提示した以上の稼働面積が必要となる。

具体的データ

図1~2,表1~2

その他

  • 中課題名:新技術の経営的評価と技術開発方向及び課題の提示
  • 中課題整理番号:114a0
  • 予算区分:交付金
  • 研究期間:2011~2013 年度
  • 研究担当者:西村和志
  • 発表論文等:西村(2013)農林業問題研究、49(1):100-105