施設園芸における新規就農者向けの経営管理チェックシート

要約

新規就農者が営農上の課題を把握できる経営管理チェックシートである。チェックシートは、問題の要因や経営管理サイクルの区分に従った設問で構成され、栽培管理、作業管理、販売管理、財務管理の分野において管理の達成度を具体的に把握できる。

  • キーワード:新規就農者、経営管理、チェックシート、営農診断、達成度評価
  • 担当:経営管理システム・経営管理技術
  • 代表連絡先:電話 029-838-8481
  • 研究所名:中央農業総合研究センター・農業経営研究領域
  • 分類:研究成果情報

背景・ねらい

農業労働力の減少に歯止めをかけるために、近年、新規就農者の支援制度が整備されている。その一方で、青年就農給付金制度(開始型)では5年間の給付期間中に経営定着を図ることが求められるなど、就農後の経営成長を促すための支援が重要になっている。新規就農者の場合は、技術水準、経営者能力が様々であり、個々の能力や技術の習得状況に合わせた支援が必要とされる。そのため、新規就農者自身が営農状況を評価することで、現状の達成度を把握できるチェックシートを開発する。

成果の内容・特徴

  • 開発した経営管理チェックシートは、施設園芸作の新規就農者を対象にしており、栽培管理、作業管理、販売管理、財務管理の4つの分野に分かれている。栽培管理については、土づくりなど9つの小項目に分類され、合計60の設問で構成されている(図1)。
  • チェックシートでは、栽培、販売、財務管理の各項目について、問題の要因を知識・判断・実行レベルに3区分して設問を設けており、各区分において就農者が4段階で評価するように設計している(図1)。また、作業管理の分野に関しては、経営管理サイクルにあわせて計画、実行、改善の3つに区分し、現状の作業管理の達成度を数値として把握することができる。
  • 施設園芸作で参入した新規就農者2名(A、B)が、チェックシートに記入した結果をみると(表1)、収量、及び収量の満足度が低いBにおいては、全般的に達成度が低い。特に栽培管理についてみると(図2)、Bの場合、生理障害対策、本圃管理などの数値が低くなっている。現状の達成度をみるために、本圃管理について、知識、判断、実行レベルの区分でみると、判断、実行の数値が低く、知識はあるが、営農時の判断と実行の段階で課題が生じていることがわかる。
  • 作業管理について、計画、実行、改善別の平均値をみると(表2)、Bの場合、実行、改善の値が2.0と低い。そのため、実際の営農場面での作業管理について、作業日誌の記録、作業環境の整備などから取り組み、作業改善につなげることが求められる。このように、チェックシートを用いて、問題の要因別、経営管理サイクルごとに数値化することで、就農者自身の改善点が明確になるとともに、就農者の状況把握が容易になり、関係機関による就農後のフォローアップにつなげることができる。

成果の活用面・留意点

  • 新規就農者による経営状況の把握、及び地方自治体、普及センター等における新規就農者の指導場面などで活用できる。
  • チェックシートの栽培管理項目は、施設園芸作(土耕トマト、キュウリ)を対象としている。他の管理項目については異なる作目でも適用できる。
  • 作成したチェックシートはWeb上で公開している。

具体的データ

図1~2,表1~2

その他

  • 中課題名:新規参入経営支援のための経営管理技術の開発
  • 中課題整理番号:114c0
  • 予算区分:交付金
  • 研究期間:2010~2013年度
  • 研究担当者:澤田守、米倉茜(笠間地域農業改良普及センター)、草野謙三(茨城県農業総合センター)
  • 発表論文等:澤田、米倉(2014)農業経営通信、259:10-11