自脱コンバインの排わらカッタを改造して稲わらの乾燥を促進

要約

自脱コンバインの排わらカッタの切断刃を切断機能のない回転板と交換することで、排わらが圧砕され、乾燥が速まるとともに、スワースコンディショナによる反転を併用することで回収率が10%程度向上する。所要動力の増加はない。

  • キーワード:自脱コンバイン、稲わら、乾燥、排わらカッタ、圧砕
  • 担当:バイオマス利用・バイオマスエネルギー
  • 代表連絡先:電話 029-838-8481
  • 研究所名:中央農業総合研究センター・作業技術研究領域
  • 分類:普及成果情報

背景・ねらい

飼料や糖化原料として稲わらを高品質・低コストで収集するには、晴天下で3日程度、1日1回以上反転して圃場乾燥する必要がある。しかしながら、降雨により乾燥日数が多くかかると品質劣化が懸念されるため、短期間で乾燥させる方法の開発が望まれている。そこで、自脱コンバイン収穫において、排わらカッタの部品交換により稲わらを圧砕処理し、低コストで稲わら乾燥を促進させる処理技術を開発する。

成果の内容・特徴

  • 自脱コンバイン用排わらカッタの2本の回転軸に装着されている回転刃を、稲わらを掻き込めるよう外周が波形になっている回転板(以下、ロータ)に交換し、図1のように配置する。ロータには、市販の排わらカッタ用の掻き込みホイルを転用する(図1)。
  • 脱穀された稲わらは、2軸間を通過する際に、切断されずに折り曲げと圧縮を受け(以下、圧砕)、収穫後の稲株上に落下する(以下:圧砕わら)。所要動力は、Y社製自脱コンバインの場合、改造前の細断では0.35~0.42kWに対して、圧砕では0.16~0.25kWと少ない。
  • 圧砕わらは、数か所で折れ曲がり、コンバイン後方に排出され、刈り株上に堆積する。図2に圧砕作業状況と収穫後の稲わらの外観を示す。刈り株上の圧砕わらは、長わらに比べて約1.5倍の高さに堆積する。稲わらが折り曲げられたことにより、堆積した稲わら間の空隙が広がり通気性が向上する。
  • 圧砕わらは未処理の長わらに比べ、保存に適する水分である20%以下まで約3日で到達する(図3)。途中で降雨があった場合でも早く乾燥する(図4)。さらに、圧砕わらは折れ曲がることにより、地表面に落下せずに刈り株上に乗りやすくなるため、スワースコンディショナによる反転を併用することで、圧砕なしに比べてロールベーラでの稲わらの回収率が10%程度向上する。
  • 稲わら回収モデル(文献2)によるシミュレーション(収集量60,000t、栽培面積24,000ha、バンカーサイロ利用)では、収穫可能日数と処理量の増加、回収効率の向上等により、乾燥稲わらの収集コストは13.3円/kgから12.3円/kgまで低減する。

普及のための参考情報

  • 普及対象:農業機械メーカー、稲わら回収を行う農家
  • 普及予定地域・普及予定面積・普及台数等:畜産が盛んな地域への導入が主体。実用化に向けた話し合いをメーカーと開始。
  • その他:試験にはY社製自脱コンバインを用いたが、他社製でも、ロータの間隙等を適切に設定することで本技術の利用が可能と思われる。回転軸の一部ににわらが巻きつく場合があるが、通常の走行速度で作業は可能である。長わら排出と圧砕処理の切換は、運転席付近の切換レバーで行う。細断処理への切換は、カッタごと交換かロータをはずして回転刃と交換が必要で、交換に要する部品代は1台当り38,000円ほどである。

具体的データ

図1~4

その他

  • 中課題名:未利用有機質資源のエネルギー変換システムの開発
  • 中課題整理番号:220b0
  • 予算区分:委託プロ「草本バイオ」
  • 研究期間:2011~2014年度
  • 研究担当者:重田一人、小林有一、塚本隆行、加藤仁、薬師堂謙一
  • 発表論文等:
    1)重田ら「自脱コンバインの排わら処理装置、稲わら乾燥方法」特開2014-150736(2014年8月25日)
    2)加藤ら「システムダイナミックス手法による稲わら回収モデルの研究」農作業研究46(4),179-187,2011