絶乾土水振とう抽出有機態炭素量による水田風乾土可給態窒素の迅速評価

要約

絶乾土から水振とうで抽出された有機態炭素量を測定することにより、標準法である風乾土30°C4週間湛水培養による可給態窒素量を迅速評価できる。

  • キーワード:水田土壌、可給態窒素、有機態炭素量、風乾土、迅速判定
  • 担当:総合的土壌管理・土壌養分管理
  • 代表連絡先:電話 029-838-8481
  • 研究所名:中央農業総合研究センター・土壌肥料研究領域
  • 分類:研究成果情報

背景・ねらい

肥料価格の高騰や有機質資源の利用促進を背景に、土壌診断に基づく施肥管理の重要性が高まっている。可給態窒素は土壌の窒素肥沃度の指標として重要な診断項目であるが、測定には風乾土壌を4週間湛水培養する事が必要なため、多くの土壌分析機関で実施されていない。近年、畑土壌の可給態窒素評価法として80°C16時間水抽出法を開発したが、水田土壌への適用性は低く課題として残されている。そこで、水田土壌に適用性が高く、迅速に評価が可能な可給態窒素の判定法を開発する。

成果の内容・特徴

  • 操作手順を図1に示す。105°C絶乾土から1時間水振とうにより抽出される有機態炭素(以下TOCとする)の測定値により可給態窒素を評価する方法である。
  • 絶乾土水振とうで抽出されたTOCは、水田土壌の種類や作付体系に関わらず標準法の風乾土30°C4週間湛水培養による可給態窒素量と高い正相関が認められる(図2)。
  • 105°Cでの乾熱時間がTOCの測定値に影響するので、24時間とする(図3)。
  • 振とう温度は25°Cを標準とするが、±5°Cの範囲では有意な差は認められない(図4)。

成果の活用面・留意点

  • 本手法は水田土壌の風乾土を湛水培養し、得られた可給態窒素の値を土壌からの窒素供給量の指標としている研究機関等で活用できる。
  • TOCの測定には全有機態炭素計等を必要とする。
  • 湿潤土からの絶乾土作成は検討していない。

具体的データ

図1~4

その他

  • 中課題名:土壌・資材の評価と肥効改善による効率的養分管理技術の開発
  • 中課題整理番号:151a1
  • 予算区分:交付金、委託プロ(気候変動)
  • 研究期間:2009~2014年度
  • 研究担当者:野原茂樹、東英男、上薗一郎(鹿児島農総セ)、高橋茂、加藤直人
  • 発表論文等:東ら(2015)土肥誌、86(3):188-197