ポリフィルム被覆を行った露地野菜栽培圃場からの一酸化二窒素排出量の評価

要約

夏期の施肥後のポリフィルム被覆を導入した露地野菜栽培圃場においては、約1カ月間のポリフィルム被覆期間中に、年間総排出量の40%以上の一酸化二窒素が大気中に排出される。

  • キーワード:太陽熱処理、一酸化二窒素、ポリフィルム、年間総排出量、露地野菜
  • 担当:総合的土壌管理・土壌養分管理
  • 代表連絡先:電話 029-838-8481
  • 研究所名:中央農業総合研究センター・土壌肥料研究領域
  • 分類:研究成果情報

背景・ねらい

夏期の作付け前に施肥と同時にポリエチレンフィルムによる被覆(ポリフィルム被覆)をして、一定期間継続する技術(太陽熱処理)が近年普及している。一方、先行研究により、ポリフィルム被覆下の土壌において、施肥窒素から温室効果ガスである一酸化二窒素(亜酸化窒素;N2O)が生成され、ポリフィルムの透過、および側方の畝間土壌へのガス拡散によって大気中に排出されることが明らかとなっている。本研究では、ポリフィルム被覆を行った露地野菜栽培圃場からの一酸化二窒素フラックスを通年で測定・評価し、ポリフィルム被覆期間中、特に夏期の太陽熱処理期間中のN2O排出が年間のN2O総排出量に及ぼす影響を明らかにすることを目的とする。

成果の内容・特徴

  • ポリフィルム被覆下の土壌中で生成されたN2Oは、土壌表面からポリフィルムを透過して大気中に排出されるとともに、側方への拡散によってポリフィルム被覆されていない畝間の土壌表面からも大気中に排出される。夏期の太陽熱処理期間のN2Oフラックスは、冬期のポリフィルム被覆期間よりも高い(図1)。
  • 冬期のポリフィルム被覆期間(約1カ月間)のN2O排出量が年間総排出量に占める割合は低い(本研究では4~12%)。一方、夏期の施肥後のポリフィルム被覆期間(約1カ月間)のN2O排出量が年間総排出量に占める割合は高く、40%以上となる(本研究では、41~66%)。特に、ポリフィルムを透過して多くのN2Oが排出される(本研究では、年間総排出量の33~53%)(図2)。本圃場試験でのN2O総排出量は、環境省・日本国温室効果ガスインベントリ報告書等に基づいて計算される標準的な排出量の81~161%に相当する。

成果の活用面・留意点

  • 圃場試験は、関東地方の淡色黒ボク土壌の露地野菜栽培圃場において、二種類の有機質肥料を施用して行った。
  • ポリフィルム被覆の導入によるN2O総排出量の増減については、別の研究により確認する必要がある。
  • 圃場におけるN2O排出を正確に推定するためには、ポリフィルム被覆および畝間を含めた圃場全体を考慮する必要がある。本試験の結果は、2006 IPCC Guidelines for National Greenhouse Gas Inventoriesにおいて実測データの不足が指摘されていた部分のデータを示すものであり、温室効果ガス発生インベントリの精緻化に寄与する。

具体的データ

図1~2

その他

  • 中課題名:土壌・資材の評価と肥効改善による効率的養分管理技術の開発
  • 中課題整理番号:151a1
  • 予算区分:交付金
  • 研究期間:2009~2014年度
  • 研究担当者:西村誠一、駒田充生、建部雅子、高橋茂、米村正一郎(農環研)、唐澤敏彦、佐藤文生、加藤直人
  • 発表論文等:
    1)Nishimura S. et al. (2012) Biol. Fertil. Soils 48:787-795
    2)Nishimura S. et al. (2014) J. Agric. Meteorol. 70(2):117-125