照度や年齢による判読可能な表示類の配色と文字サイズ

要約

農業機械等の表示類の視認性向上に資する年齢や照度を考慮した配色毎の判読可能な最小文字サイズである。判読できる割合に対応するサイズ(%タイル値)を推定可能である。これより60歳以上の90%に判読してもらう場合には18pt以上にする必要がある。

  • キーワード:視認性、配色、文字サイズ、照度、加齢
  • 担当:IT高度生産システム・農作業ロボット体系
  • 代表連絡先:電話 029-838-8481
  • 研究所名:中央農業総合研究センター・作業技術研究領域
  • 分類:研究成果情報

背景・ねらい

担い手不足や高齢化等に対応するため、身体負担が少なく安全で簡単に作業できる農作業体系が必要とされている。しかし、農業機械等で見づらい表示が多数見受けられ、農業者から視認性向上の要望がある。そこで、表示類の文字サイズや配色について、高齢者を含む幅広い使用者の年齢や光環境を考慮した実用的で定量的な設計指標を得る。

成果の内容・特徴

  • 運転席周囲の操作表示や注意ラベル等を目視することを想定した視距離60cmにおける判読可能な最小文字サイズの平均値である。字体はゴシック体であり、配色は表示類で主に使用されている基本色9色(白[N9.5]、灰[N5.5]、黒[N1]、赤[7.5R4/14]、黄赤[2.5YR6/14]、黄[2.5Y8/14]、緑[10G4/10]、青[2.5PB3.5/10]、銀[-])の組み合わせ29通りである。照度は薄明所から炎天下を想定した3段階(低[照度10 lx程度]、中[500 lx程度]、高[10,000 lx以上])である。被験者は60歳未満(平均43.4±標準偏差9.8歳[20~59歳])、60歳以上(65.0±5.3歳[60~80歳])の各21名である。
  • 判読可能な最小文字サイズについて、「60歳未満」では、照度「低」で平均値9~16pt(1pt=0.35mm)で、「中」・「高」で平均値6~11ptである(図1)。「60歳以上」では、照度「低」で平均値11~23ptで、「中」・「高」で平均値6~14ptである(図2)。これらから、照度「中」・「高」では、最小サイズは比較的小さく、年齢による差も少ないが、照度「低」では、最小サイズが全体的に大きくなり、特に「60歳以上」では1.5倍程度にもなる。さらに、平均値と標準偏差とは比例する傾向がある。
  • 判読可能な最小文字サイズのデータは、年齢層別に正規分布に従うことが確かめられているので、配色ごとに標準正規分布表から判読できる割合に対応した文字サイズ(%タイル値)を推定可能である。これらから、照度「低」で、安全標識等を60歳以上の90%以上に判読してもらう場合には、文字サイズを18pt以上にする必要がある(表1)。

成果の活用面・留意点

  • 表示類の文字サイズ、配色の設計に当たっては、想定される使用者の年齢層、照度等を考慮しながら、発表論文に掲載されている具体的データを参照する。
  • 安全標識は配色が定められている規格等を参照する。
  • 刻印や液晶モニターに表示されている文字については別途調査する必要がある。

具体的データ

図1~2,表1

その他

  • 中課題名:土地利用型大規模経営に向けた農作業ロボット体系の開発
  • 中課題整理番号:160a0
  • 予算区分:交付金、競争的資金(科研費)
  • 研究期間:2010~2014年度
  • 研究担当者:菊池豊、小林恭、光永貴之、宮本武緒(丸山製作所)、湯浅一康(丸山製作所)、松田一郎(丸山製作所)、瀬尾明彦(首都大学東京)、武田純一(岩手大学)
  • 発表論文等:菊池ら(2014) 農食工誌、76(4):333-340