グルタチオン濃度の制御によるコマツナの黄化抑制

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要約

コマツナ緑葉の暗室貯蔵中の黄化にはグルタチオン濃度が深く関与しており、緑葉細胞内のグルグチオン濃度を人為的に高めるとコマツナの黄化が速まり、グルタチオン濃度を枯渇させると黄化が抑制される。

  • 担当:食品総合研究所・素材利用部・多水分素材研究室
  • 代表連絡先:0298-38-8087
  • 部会名:食品
  • 専門:食品品質
  • 対象:葉茎菜類
  • 分類:研究

背景

収穫や貯蔵・流通は野菜にとって大きなストレスであり、栽培されていた時とは異なった生理的変化を引き起こし、急速に劣化する。従って、野菜の劣化防止には、収穫後の生理的変化を的確に把握し、野菜の老化を制御することが不可欠である。グルタチオンは生体内での活性酵素の消去等環境ストレスからの防御機能に関与していると考えられている。このため植物のグルタチオン含量は、光、酸素濃度、公害ガス、重金属等環境要因の変動に鋭敏に反応して増減することが知られている。そこで葉菜類の老化機構の解明及び劣化抑制を目的として、葉菜類の黄化過程でのグルタチオン含量の変化を測定するともに、人為的にグルタチオンを増減させた時の黄化速度に与える影響を明らかにした。

成果の内容・特徴

  • 葉柄部を水中に浸し暗下20°Cで貯蔵したコマツナ葉のグルタチオン含量は収穫後1日で急減するが、その後の黄化過程で増加した(図1)。
  • コマツナ葉に葉柄部より人為的にグルタチオンを吸収させると、細胞内のグルタチオン濃度は2日目までに急速に増加し、収穫時の2.5倍に達し、その後定常状態を維持した(図2)。しかし、グルタチオン合成酵素阻害剤であるブチオニンスルホキサミンを吸収させたコマツナ葉では細胞内のグルタチオン含量は急速に減少し、収穫後1日までで殆ど枯渇した(図2)。
  • 細胞内グルタチオン濃度が増加したコマツナ葉はクロロフィルの減少が速くなり、ブチオニンスルホキサミンを取り込ませてグルタチオンを枯渇させるとクロロフィルの減少速度が遅くなり黄化が遅れた(図3、4)。以上のことより、緑葉の黄化にはグルタチオン濃度が深く関与しており、その濃度の増加により緑葉の黄化が速まることが明らかになった。

成果の活用面・留意点

収穫後の野菜中のグルタチオン濃度を低下させると野菜の劣化を防止出来る可能性がある。しかし、野菜にブチオニンスルホキサミン等薬品を添加するのは問題があるので、育種等で収穫後に細胞内グルタチオン濃度が低下する野菜を開発する必要がある。

具体的データ

図1 コマツナ葉の黄化過程のグルタチオン含量の変化図2 コマツナ葉のグルタチオン含量に及ぼす添加グルタチオンとブチオニンスルホキサミンの影響
図3 コマツナ葉のグルタチオン含量に及ぼすグルタチオンとブチオニンスルホキサミンの効果図4 コマツナ葉の黄化に及ぼすグルタチオンとブチオニンスルホキサミンの効果

その他

  • 研究課題名:葉菜類の老化機構の解明
  • 予算区分:経常
  • 研究期間:平成5年度(平成元年~平成5年)
  • 研究担当者:岩橋由美子、細田 浩、小泉英夫
  • 発表論文等:収穫後の葉菜類のグルタチオン含量及びグルタチオン関連酵素の変動について、日本農芸化学会誌、65巻3号、1991