Clostridium thermocellumが生成するセルロソーム(セルラーゼ複合体)の解離法

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要約

好熱嫌気性細菌Clostridium thermocellumが生成するセルロソームは非常に安定で,SDS存在下で加熱処理する以外に解離法がなかったが,未変性状態で解離する方法を開発した。解離したセルロソームは透析により容易に再構成され,活性を回復した。

  • 担当:食品総合研究所・素材利用部・資源素材化研究室
  • 代表連絡先:0298-38-8061
  • 部会名:食品
  • 専門:バイテク
  • 対象:微生物
  • 分類:研究

背景

好熱嫌気性細菌Clostridium thermocellumは強力な結晶性セルロース分解活性を有するセルロソームと呼ばれるセルラーゼ複合体(分子量:200万~350万)を生成する。セルロソームは30~45個のサブユニットが規則的に配置された構造を持ち(図1),高度に進化した酵素の形態と考えられる。セルロソームは非常に安定なため,これまでSDS存在下で加熱変性処理する以外に解離法がなかった。また,サブユニットをコードする遺伝子をクローニングし大腸菌に生成させた組み替え蛋白質を用いても,活性を持った複合体を再構成することができず,糖鎖等のポリペプチド以外の成分の関与が推定されている。そこで,自然の状態でのサブユニットの単離を目的として,変性操作を伴わない解離法を検討した。

成果の内容・特徴

  • 両性界面活性剤である3-〔(3-コーラミドプロピル)ジメチルアンモニオ〕-1-プロパンスルホネート(CHAPS),金属キレート試薬であるエチレンジアミン四酢酸(EDTA),還元剤であるヂチオスレイトール(DTT)が共存する条件下で,セルロソームが解離することを見いだした(図2)。
  • 最適の解離条件は,EDTA濃度16mM,CHAPS濃度230mM,DTT濃度20mM,pH7.0,45°Cだった。20時間の処理により,セルロソームの92%が解離した(図2上下)。この時,結晶性セルロース分解活性は完全に消失したが,カルボキシメチルセルロース分解活性(CMCase)は1.9倍に上昇した。
  • 解離処理したセルロソームは,透析により,結晶性セルロース分解活性を解離前と同程度に回復した。この時,少なくとも3種類の複合体が生成した(図3)。
  • 解離後,各種のクロマトグラフィーにより,4種のサブユニットを単離,精製した。

成果の活用面・留意点

本解離法を用いると,セルロソームのサブユニットを自然に近い状態で単離することが可能であり,サブユニット間の相互作用を調べること等により,複合体構造の形成原理を明らかにできるものと期待される。

具体的データ

図1
図2
図3

その他

  • 研究課題名:耐熱性セルロソームの構造・機能と改造
  • 予算区分:大型別枠研究(生物情報)
  • 研究期間:平成9年度(平成6~9年度)
  • 研究担当者:森 隆、濱松潮香、徳安 健
  • 発表論文等:Dissociation of the cellulosome of Clostridium thermocellum without denaturation, Thermophile'96 Abstract Book p284 (1996)