吸収と散乱の両特性を有する生乳脂肪の近赤外検量線作成時の波長選択

要約

生乳の近赤外スペクトルにおいて、吸収と散乱の両特性を有する生乳脂肪の吸収バンドを相関プロットから特定することは困難であるが、生乳の近赤外スペクトルにMSC処理を施すことによりその相関プロットから生乳脂肪の吸収バンドを容易に探索する手法を確立した。

  • 担当:食品総合研究所・分析評価部・非破壊評価研究室
  • 代表連絡先:0298-38-8088
  • 部会名:食品
  • 専門:食品品質
  • 対象:
  • 分類:研究

背景

近赤外分光法で食品成分測定用の高精度の安定した検量線を作成するには、対象とする成分の吸収バンドを第一波長として選択することが重要である。通常、その波長の探索には相関プロット(注1)が用いられるが、生乳の近赤外スペクトルにおいて吸収と散乱の両特性を有する牛乳脂肪の場合、この相関プロットが有効に機能しないことが知られている。そこで本研究では、吸収と散乱の両特性を有する成分を対象とする場合の相関プロットの挙動を解明すると共に、相関プロットを用いて適切に成分吸収バンドを特定する手法の開発を試みた。
(注1)スペクトルデータの対象成分値に対する相関係数を各波長ごとにプロットした図。

成果の内容・特徴

  • 透過方式により測定した生乳の近赤外スペクトルは脂肪含量の増加につれて上方へシフトする(図1)。これは脂肪含量の増加につれて脂肪球の数が増加し、そのことによって光の散乱が強くなるためである。
  • 原スペクトルから算出した相関プロットはほぼ平坦なグラフを示し、これによる成分吸収バンドの特定は困難である。これはスペクトルに強い多重共線性が存在するためである。
  • スペクトルを2次微分しても散乱の違いによる影響は除去できず、2次微分スペクトルから算出した相関プロットは対象成分(生乳から抽出した脂肪)の吸収バンドとは無関係の波長でピークを示す(図2)。
  • スペクトルにMSC処理(注2)を施し、併せて2次微分処理を行うと散乱の違いによる影響はほぼ除去でき、これらの前処理を施したスペクトルから算出した相関プロットは対象成分(脂肪)の吸収バンドでピークを示し(図3)、この波長(926nm)を第一波長とする4波長の検量線において良好な解析結果が得られる(図4)。(注2)スペクトルを平行移動および回転させて特定のスペクトルに合わせこむスペクトルの前処理方法。

成果の活用面・留意点

多重共線性の強いスペクトルにおいても、本解析方法を用いれば検量線作成に必要な対象成分の吸収バンドを容易に特定することが可能である。

具体的データ

図1 脂肪含量の異なる生乳の近赤外スペクトル
図2 2次微分スペクトルから算出した相関プロット及び脂肪の2次微分スペクトル
図3 MSC処理したスペクトルの2次微分値から算出した相関プロット及び脂肪の2次微分スペクトル
図4 生乳の脂肪含量の近赤外法による値と従来法による値の関係

その他

  • 研究課題名:近赤外分光法による生体液の連続モニタリング手法の開発
  • 予算区分:基礎研究推進事業(生研機構)
  • 研究期間:平成10年度(平成8~12年)
  • 研究担当者:河野澄夫・伊豫知枝
  • 発表論文等:Wavelength selection for NIR calibration to determine fat in milk, having both properties of scattering and characteristics absorbing, 9th International Diffuse Reflectance Conference,USA (1998).