主要有色米品種と一般米品種との交雑個体の識別指標

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要約

有色米品種由来の交雑粒は玄米色では一般米と識別できないが、紫黒米品種「おくのむらさき」、「朝紫」由来の交雑F1個体は葉舌色及びふ先色、赤米品種「夕やけもち」由来の交雑個体はふ先色で一般米品種と識別できる。

  • キーワード:イネ、有色米、混入、交雑、玄米色、葉舌色、ふ先色
  • 担当:東北農研・低コスト稲育種研究東北サブチーム
  • 連絡先:電話0187-66-2773、電子メールwww-tohoku@naro.affrc.go.jp
  • 区分:東北農業・水稲、作物
  • 分類:技術・参考

背景・ねらい

近年、赤米、紫黒米等の有色米品種の普及とともに、一般米品種への混入が問題となっている。播種、収穫時等の人為的な混入、前年の漏生種子由来の個体の混入のほか、有色米品種の花粉が飛散して自然交雑が起こることが混入の原因となる。有色米が一般米へ混入すると検査等級が下がるため、効果的な混入防止方法が求められている。そこで、有色米品種と一般米品種との交雑粒及び交雑個体を識別する指標を明らかにし、これらを除去するための基礎的知見を得る。

成果の内容・特徴

  • 有色米品種(紫黒米「おくのむらさき」、「朝紫」、赤米「紅衣」、「夕やけもち」)と一般米品種との交雑粒の玄米色は、母親の玄米色と同じになる(表1)。従って、一般米品種に有色米品種が自然交雑しても、交雑粒の玄米色では一般米と識別できない。
  • 「おくのむらさき」、「朝紫」由来の交雑F1個体は、正逆交雑に関わらず葉舌色が淡紫色となり、一般米品種と識別ができる。葉舌色は葉齢が小さいときは鮮明ではないが、生育が進むにつれて濃くなる。「紅衣」、「夕やけもち」由来の交雑F1個体の葉舌色は一般米品種と変わらない(図1、表1)。
  • 「おくのむらさき」、「朝紫」、「夕やけもち」由来の交雑F1個体は、正逆交雑に関わらずふ先色が紫色になり、一般米品種と識別ができる(図2、表1)。「紅衣」由来の交雑F1個体のふ先色は一般米品種と変わらない(表1)。
  • 「ひとめぼれ」と「朝紫」、「夕やけもち」との交雑F1個体は、稈長、穂長、穂数だけでは「ひとめぼれ」と識別できない(表2)。
  • 有色米品種由来の交雑F1個体に実ったF2種子の玄米色は、正逆交雑に関わらず親である有色米品種の玄米色と同じになる(表1)。

成果の活用面・留意点

  • 「紅衣」由来の交雑F1個体は、葉舌色、ふ先色では一般米品種と識別できない。
  • 有色米品種と一般米品種との交雑粒を除去することは難しいため、交雑の可能性があるところからは採種しないことが望ましい。
  • 「おくのむらさき」由来の交雑粒が25.5m離れた距離で検出された事例がある。
    (平成17年度研究成果情報http://www.naro.affrc.go.jp/project/results/laboratory/tarc/2005/tohoku05-28.html)。

具体的データ

表1 有色米品種と一般米品種との交雑粒の玄米色、交雑F1個体の特徴及びF2種子の玄米色

図1 あきたこまち/朝紫のF1個体の葉舌(淡紫色)

図2 あきたこまち/朝紫のF1個体のふ先(紫色)

表2 有色米品種と一般米品種との交雑F1個体の生育特性

 

その他

  • 研究課題名:直播適性に優れ、実需者ニーズに対応した低コスト業務用水稲品種の育成
  • 課題ID:311-a
  • 予算区分:加工業務用4系
  • 研究期間:2003~2006年度
  • 研究担当者:山口誠之、片岡知守、遠藤貴司、中込弘二
  • 発表論文等:山口ら(2005)日作東北支部報48:11-12