交流高電界技術による生乳の殺菌

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要約

乳中タンパク質が電極表面に付着するため、これまで適用が困難であった交流高電界技術を電極構造の改良を行うことで適用可能とし、殺菌による品質劣化の少ない高品質な牛乳を製造する。

  • キーワード:交流高電界、生乳
  • 担当:食総研・食品工学研究領域・先端加工技術ユニット
  • 連絡先:電話029-838-8025
  • 区分:食品試験研究
  • 分類:研究・参考

背景・ねらい

交流高電界技術は果汁等の高品質な殺菌方法として実用化が進んでいるが、生乳の交流高電界処理は生乳に含まれるタンパク質が電極 表面に付着し、凝固するため、本技術による殺菌処理が困難であった。交流高電界処理による生乳の殺菌方法は、低温殺菌牛乳の高品質を維持しながら、ロング ライフ処理と同程度の品質保持期間を有する高品質牛乳の製造方法として期待される。本研究では、電極構造の改良によって電極表面への生乳成分の付着を低減 し、牛乳殺菌への交流高電界技術の適用を目指した。

成果の内容・特徴

  • 生乳のモデルとして、市販低温殺菌(66℃、30分)牛乳を試料とし、耐熱性菌の指標としてBacillus subtilis (JCM2744株) の芽胞を供試した。低温殺菌牛乳を連続式交流電界装置(図1)に流し、定常運転後に、芽胞を添加し、1分30秒後に装置出口から得られた牛乳を10mLずつ分取後、定法により残存生菌数を計数した。
  • 交流高電界装置はこれまで果汁の殺菌処理の目的で開発してきたものであるが、本研究では、牛乳に適用するために、以下の改良を行った。1交流高電界印加直前に昇温プレートによる一次加温部を追加、2交流高電界を印加する電極を水冷、3チタン電極の表面に酸化膜を蒸着。
  • 一次加温を行って材料の温度を60℃まで昇温させることにより、交流高電界の処理温度(出口温度)を最高120℃とした。
  • 電極の冷却および電極表面の酸化膜処理を行うことにより、電極表面の焦げ付きが少なくなり、牛乳の交流高電界処理が可能となった。
  • 材料の出口温度が120℃となる条件で交流高電界処理したところ、生菌数が1/1000以下に減少した。
  • 電極出口から冷却プレートまでの配管長を変えることにより、温度の保持時間を変えたところ、交流高電界処理の場合のF値(121℃の温度で菌数が1/10となる処理時間)は0.006分であり、加熱処理のF値の0.6分よりも大幅に短縮したことが分かった(図4)。つまり、交流高電界処理により、微生物の耐熱性が大幅に低下したものと考えられた。

成果の活用面・留意点

  • 本研究で牛乳への応用が可能な連続式交流高電界装置を開発したが、連続運転可能時間が十分とは言えないため、電極構造および電界の印加方法を最適化し、牛乳の連続処理時間を更に延長させる。
  • 本装置を用いて120℃で牛乳を処理することにより、B.subtilis芽胞を1/1000以下に低減することが可能となったが、今後は他の微生物の殺菌効果についても検討する。
  • 今後、交流高電界処理した牛乳の品質特性を評価するとともに、本技術で処理した牛乳を用いたチーズ等への加工特性を評価する。

具体的データ

図1 連続式交流高電界装置のブロック図図2 連続式交流高電界処理装置の外観

 

図3 牛乳中のB.subtilisの殺菌効果図4 交流高電界処理の保持時間と殺菌効果

 

その他

  • 研究課題名:流通農産物・食品の有害生物の制御技術の開発
  • 課題ID:323-e
  • 予算区分:食品プロ
  • 研究期間:2006~2008年度
  • 研究担当者:植村邦彦、小林功
  • 発表論文等:
    1)植村ら(2007)食研報、71:27-32
    2)井上ら(2007)食工誌、8(3):123-130.
    3)井上ら(2007)食科工誌、54(4):195-199