セルロース分解物が硫酸存在下で活性白土に吸着

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要約

セロビオースは水溶液中では活性白土に吸着せず、72wt%硫酸水溶液中で吸着する。グルコースは両溶液で吸着性を示さない。セルロースの濃硫酸分解物も活性白土に吸着し、その活性白土をさらに希硫酸加水分解することにより、グルコースとして溶出・回収できる。

  • キーワード:セルロース、糖化、濃硫酸、活性白土、吸着
  • 担当:食総研・糖質素材ユニット
  • 連絡先:電話029-838-7189
  • 区分:バイオマス・変換技術
  • 分類:研究・参考

背景・ねらい

濃硫酸法は、セルロース系原料の糖化法として古くから知られており、多岐にわたる高度化研究が行われてきた。現在でも、酵素糖化 とともにバイオエタノール製造時のセルロース糖化法として注目されている。常温での濃硫酸処理によって、セルロースは効率的に加水分解を受け、短時間のう ちにセロオリゴ糖として遊離・可溶化する。しかしながら、濃硫酸法を実用的技術として完成させるためには、糖液と濃硫酸を効率的に分離し、硫酸を再利用す るための技術開発が不可欠となる。このような中で、本研究では、濃硫酸存在下でセロオリゴ糖と相互作用し、強酸存在下で高い安定性を示す物質を探索する。

成果の内容・特徴

  • 72wt%の硫酸または水に対して各種セロオリゴ糖を溶解したものを活性白土粉末と室温下で混合し、15分間静置する。その 後、遠心分離により固液分離した液層中の糖量を分析し、全体量から差し引くことにより活性白土への吸着量を計算する。セロビオースは72wt%硫酸中では 活性白土に吸着するが、水溶液中では吸着が見られない(図1)。また、セロペンタオースは、両条件下で吸着性を示し、その親和性は72wt%硫酸存在下の方が高い。一方、グルコースは両条件下で吸着性を示さない。
  • 活性白土は、粘土の熱・酸処理により製造されることから、強酸存在下での加熱に耐える。活性白土に吸着したセロオリゴ糖は、 溶液の硫酸濃度を低下させた際に一部溶出するほか、希硫酸溶液中でセロオリゴ糖の吸着した活性白土全体を加熱することにより加水分解を行い、非吸着性グル コースとして溶出させることが可能である。また、溶出後の活性白土は、セロオリゴ糖の吸着剤として再利用することが可能である。
  • セルロースを主成分とする濾紙粉末(濾紙粉末C、東洋濾紙)または稲わら粉末を72wt%硫酸により室温条件下で処理し、セ ルロースの膨潤および部分加水分解を行い、その後、活性白土を加えて混合し、15分間静置することで、セルロースの部分加水分解物が活性白土に吸着する。

成果の活用面・留意点

  • 各セロオリゴ糖の活性白土への最大吸着量は、活性白土1グラムあたり約30 mg程度であった。本技術の実用性を高めるためには、吸着機構の解明とともに、鉱物系素材の探索や活性白土製造工程の最適化による最大吸着量の増加が必要となる。
  • セルロースの部分加水分解物の重合度が高い場合、硫酸非存在下においても活性白土との相互作用が観察され、硫酸希釈による溶出挙動も鈍いものとなる。希酸加水分解によるグルコース変換工程を加えることにより、糖の脱着・回収が効率化する(図2)。

具体的データ

図1 活性白土へのセロビオースの吸着

図2 本技術によるセルロースの濃硫酸糖化後の糖と硫酸の分離工程

その他

  • 研究課題名:リグノセルロースの酵素分解技術の開発
  • 課題ID:224-b
  • 予算区分:農林水産省委託プロ「地域活性化のためのバイオマス利用技術の開発」
  • 研究期間:平成19年度~平成23年度(予定)
  • 研究担当者:徳安健(食総研)