バレイショでん粉精製カスの減容化を促進する酵素の組み合わせ

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要約

バレイショでん粉精製カスを基質とし、セルラーゼ酵素製剤とペクチナーゼ酵素製剤を同時に用いることにより、でん粉精製カスの減容化が促進される。その現象は、精製度の高いセルラーゼとペクチナーゼのみにより再現でき、投入酵素量を約1/4に減量できる。

  • キーワード:バレイショ、絞りカス、ペクチナーゼ、セルラーゼ、直接糖化
  • 担当:食総研・糖質素材ユニット
  • 連絡先:電話029-838-7189
  • 区分:バイオマス・変換技術
  • 分類:研究・参考

背景・ねらい

バイオエタノール製造原料としてバレイショ、カンショ、テンサイやそれらの茎葉等を用いた、低コストで効率的な糖化技術が求めら れている。その一つの方法として、コーンのドライミル方式と同様の、原料粉砕後の直接糖化技術の可能性が注目されている。しかしながら、これらの原料で は、破砕処理後にペクチン等が膨潤するため、酵素糖化時の撹拌が困難となるとともに、処理時に基質濃度を上げにくくなる。本研究では、破砕処理原料の膨潤 現象を制御するため、細胞壁分解酵素の使用を検討し、減容化に有効な酵素系を探索する。

成果の内容・特徴

  • バレイショでん粉精製カス(コナフブキ、斜里町農協澱粉工場より供与。)を50倍量の水で洗浄してでん粉を除去した後に水懸 濁液として、試験管に分注する。これに対して市販セルラーゼ製剤(Celluclast 1.5L、ノボザイムズジャパン社)、ペクチナーゼ製剤(Pectinex、ノボザイムズジャパン社)などを加えて50℃で60分酵素反応を行った後に室 温下で静置し、10分後の基質の沈降度を測定する。沈降度は、酵素を加えない試料の沈降度(時間内に殆ど沈降せず。)を1として、処理後の基質不溶画分の 高さを測定し、両者の比として定義し、その結果、両酵素の単独使用では殆ど沈降が起こらなかったのに対して、両者を併用した際には大きく減容できる(図1,2)。また、両者の併用時には、酵素製剤使用量に応じて減容化度は上昇する(図3)。
  • 各酵素製剤は、複数酵素の混合物であり、減容化に貢献しない酵素を多く含むと考えられることから、使用酵素量を減らすため に、減容化に寄与する酵素の絞り込みを行なう。精製度の高いセルラーゼとして、エンド型セルラーゼ(メガザイム社)およびセロビオハイドロラーゼI(メガ ザイム社)を用い、ペクチナーゼとしてポリガラクチュロナーゼ(メガザイム社)を用い、その効果を調べる。上記の二種類のセルラーゼとペクチナーゼを組み 合わせることにより、前項で見られた減容化効果を再現でき、投入酵素量を約1/4に低減できる。

成果の活用面・留意点

  • バレイショ由来の繊維質をモデルとして減容化を促進する酵素の組み合わせは、バレイショの破砕物に対しても有効性を示す。バレイショでん粉精製カス自体も、減容化や有効利用技術開発が求められており、本成果の適用が有効と考えられる。
  • 今後は、繊維質の減容化機構の解明や、直接糖化工程に求められる酵素特性を考慮した条件最適化等を行う必要がある。
  • バレイショ繊維質中のセルロースやその他の多糖の糖化が効率化し、糖化液はバイオエタノール製造原料としての利用が期待される。また、減容化により、バイオマス変換廃棄物処理コストの低減に繋がることが期待される。

具体的データ

図1 バレイショでん粉精製カス懸濁液の減容化(左:酵素製剤添加、右:無添加)

図2 各酵素製剤を単独または複数種類加えた際のバレイショでん粉精製カスの減容化度(60分酵素反応後、室温で10分静置した際の懸濁液中の不溶沈殿物の高さを、酵素無添加試料(左)の値との比として表示。)

図3 セルラーゼ製剤単独またはセルラーゼ製剤とペクチナーゼ製剤を用いて処理した際のバレイショでん粉精製カスの減容化度

その他

  • 研究課題名:リグノセルロースの酵素分解技術の開発
  • 課題ID:224-b
  • 予算区分:農林水産省委託プロ「地域活性化のためのバイオマス利用技術の開発」
  • 研究期間:平成19年度~平成23年度(予定)
  • 研究担当者:徳安健、藤原真紀