遺伝子組換え農産物検査の信頼性確保のためのダイズCRMの生産・頒布

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要約

わが国の遺伝子組換え農産物の検査において、標準分析法を用いる試験室の内部質管理及び新規に開発した分析法の妥当性確認に利用可能な認証標準物質(CRM)を製造し、頒布する態勢を確立した。

  • キーワード:遺伝子組換え農産物、認証標準物質(CRM)、内部質管理
  • 担当:食総研・食品分析研究領域・GMO検知解析ユニット
  • 代表連絡先:電話029-838-7369(CRM頒布申し込み先:食総研・企画管理部・連携共同推進室029-838-7990)
  • 区分:食品
  • 分類:技術及び行政・普及

背景・ねらい

農産物の供給体制を国際貿易に大きく依存するわが国において、遺伝子組換え(GM)農産物に関する表示基準の実効性を科学的に保証するものとして、食総研は、国立医薬品食品衛生研究所、農林水産消費安全技術センター等と共にGM農産物の定性・定量検知法を開発してきた。組換えダイズ1系統、トウモロコシ5系統の定量分析法について、国際的に定められた手順に従った試験室間共同試験を実施し、その妥当性確認を行い、日本における標準分析法とした。食総研では、行政的な規制や製品の信頼性確保のための自主検査等の目的で、GM農産物の分析をこの標準分析法で行う分析機関が、分析値の信頼性を保つために利用できる認証標準物質(CRM)を製造し、頒布することを目的として、CRMの製造法を確立する。

成果の内容・特徴

  • 国際的に通用するGM農産物のCRMの生産を行う目的で、標準物質生産のためのISOガイド34:2000(JIS Q 0034:2001;標準物質生産者の能力に関する一般要求事項)及びISO/IEC 17025:2005 (JIS Q 17025:2005)に基づく品質システムを構築し、認定を取得した(図1)。その品質システムのもとで、ダイズCRMの製造法を確立し、GMダイズが一定の割合で含まれるCRMを生産した。
  • 高純度の遺伝子組換え、および非組換えダイズの乾燥粉末を重量比に基づき混合し、均一な混合粉末とし、ランダムサンプリングと分析により均一性を確認後、標準分析法による試験室間共同試験を行う。その結果を技術委員会で審議して、標準分析法の分析精度を考慮に入れた不確かさを付した認証値を付与し、CRMとしての頒布を行っている(図2および図3)。
  • 現在、GMダイズRoundupReadyTM Soybean (RRS)について2種類のCRMのセットNFRI-GM001とNFRI-GM002を頒布しており、RRS含有量の認証値は、NFRI-GM001が、<0.05 m/m%、(0.069±0.032) m/m%および(0.133±0.030) m/m%、NFRI-GM002が、<0.05 m/m%、(0.177±0.076) m/m%および(6.10±1.09) m/m%である(図3)。
  • 標準分析法を使用しても、実験室の環境、分析操作を行う分析者の技能、測定に用いる機器の状態により、分析値が真の値からずれることがあり、そのずれを検出し、常に真の値に近い妥当な分析値を得られるように測定環境などを整える“内部質管理”を行うために、本CRMを使用することができる。すなわち自らの分析値をCRMの認証値と比較してずれの大きさを確認し、必要な環境整備等を行う。
  • また、試験室間共同試験によらず重量混合比に基づく認証値が付与された頒布を目的としていないCRMについては、認証値を伏せたブラインド試料として、新規に開発した分析法の妥当性確認のための試験室間共同試験に用いている。

成果の活用面・留意点

  • 分析の際には、分析対象成分の認証値が付与されている標準物質を用いて内部質管理を行うことが国際的にも求められおり、このCRMは、GMダイズの検知を行う検査機関等での内部質管理に利用でき、分析結果の信頼性確保に役立つ。
  • このCRMの頒布先は、原料ダイズの供給元との契約により、「農林物資の規格化及び品質表示の適正化に関する法律(JAS法)」の定める「遺伝子組換え農産物の品質表示基準」および「食品衛生法」に基づいて表示制度の実効性を確保する目的で標準分析法を利用している機関や分析所に、その使途についても内部質管理に限定している。なお、公的機関が実施する外部精度管理(技能試験)への利用はこの範囲として認めている。

具体的データ

図1 ISOガイド34に基づく標準物質生産者認定証

図2 ダイズCRMの製造手順

図3 GMダイズRRS検知用CRM

その他

  • 研究課題名:汚染実態の把握に資する分析データの信頼性確保システムの確立及びリスク分析のための情報の収集・解析
  • 中課題整理番号:321b
  • 予算区分:基盤、その他の受託(消技セ)
  • 研究期間:2006~2009年度
  • 研究担当者:橘田和美、古井聡、真野潤一、高畠令王奈
  • 発表論文等:Kodama, et al. (2009) J. AOAC Int. 92: 223-233