無機元素組成によるカボチャの原産国判別

要約

日本産とニュージーランド産及びメキシコ産カボチャ種子の無機元素組成から原産国を的中率85 %で判別できる判別モデルを開発した。また、メキシコ産とニュージーランド産及びトンガ産カボチャを二群判別モデルにより的中率95%で分類できる。

  • キーワード:カボチャ、産地判別、無機元素、マニュアル
  • 担当:食総研・食品分析研究領域・分析ユニット
  • 代表連絡先:電話029-838-8059
  • 区分:食品
  • 分類:技術及び行政・普及

背景・ねらい

JAS法に基づく産地表示の信憑性調査及び産地偽装の抑止のため、産地判別技術の確立が必要となっている。カボチャの輸入量は国内流通量の4割程度で、主な輸入先はニュージーランド(NZ)とメキシコ(MX)両国で95%前後を占める(2007~2010年実績)。国産品と輸入品の流通時期は分かれているが、その端境期では競合する。また、2005年にMXとの間で経済連携協定(EPA)が結ばれ、MX以外の外国産カボチャを関税がゼロとなったMX産と偽って申告されるおそれがある。そこで、カボチャ種子中の無機元素組成を誘導結合プラズマ発光分析装置や誘導結合プラズマ質量分析装置で測定し、その組成から「日本産と外国産間」及び「MX産とMX産以外の外国産[NZ産、トンガ(TG)産]間」の原産国を科学的に判別する技術を開発する。

成果の内容・特徴

  • MX産-MX産以外の外国産間判別モデルとして、2元素による三群及び二群判別モデルを構築した。両モデルの線形判別式と、MX産とNZ産、TG産カボチャの、モデル構築用の産地が既知試料による的中率(分類的中率)、モデル検証用の産地が未知の試料による的中率(予測的中率)を表1に示す。NZ産の的中率が低い三群判別モデルと比べると、二群判別モデルでは95%の的中率で判別できる。
  • 日本(JP)産-外国産間判別モデルとして、モデル構築用試料の測定結果の線形判別分析により、各国産間[JP-MX、JP-NZ、JP-TG、MX-NZ、MX-TG]の5判別モデルを構築した(図1)。この中で、JAS法に基づく日本国内での産地表示の信憑性調査への使用を想定して、外国産品を輸入量の大半を占めるNZ産とMX産に対象を限定して、日本産-外国産間判別技術として実用化する。6元素によるJP-MX判別モデル(表2①)及び8元素によるJP-NZ判別モデル(表2②)で判別を行い、この両判別モデルで国産品と予測された試料は国産品、どちらか一方または両判別モデルで外国産と予測された試料は外国産と判別するJP-MN・NZ間判別モデル(表2③)により、日本産と外国産カボチャを予測的中率85 %と、産地表示の信憑性調査に使用には十分な的中率で判別できる。
  • 産地を伏せたカボチャ6試料を使用して3試験室で当該判別技術により日本産-外国産判別試験を行った結果、全ての試験室で全試料を正しく判定できた。

成果の活用面・留意点

  • 本技術を用いた日本産と外国産カボチャの判別法については、農林水産消費安全技術センターの検査業務で使用するマニュアルが作成され、それによる検査が実施されている。
  • 日本産と外国産カボチャの判別モデルは、外国産をNZ産とMX産に限定して構築したので、この判定モデルで外国産カボチャが必ずしも外国産と予測されない場合もある。
  • NZ、MX、TGの他に、ニューカレドニア(仏)、韓国、中国などからカボチャが輸入されているので、これらの原産国に対応できる判別モデルに更新する必要がある。
  • 種子を判別材料として用いるので、種子を取り除いた販売形態で流通するカボチャ生鮮品の判別には使えない。

表1 外国産-外国産間判別モデルとそれらによる分類的中率及び予測的中率図1 日本産とメキシコ産及び日本産とニュージーランド産判別モデルによるモデル構築用試料の判別得点のヒストグラム表2 日本産-外国産間判別モデルのモデル検証用試料の予測的中率(%)

その他

  • 研究課題名:流通・消費段階における情報活用技術及び品質保証技術の開発
  • 中課題整理番号:324-b
  • 予算区分:委託プロ(食品プロ)
  • 研究期間:2006~2008年度
  • 研究担当者:門倉雅史、法邑雄司、堀田博
  • 発表論文等:1)渡邉ら(2007) 関税中央分析所報 47: 15-23
    2)渡邉ら(2008) 食科工 55(12): 637-639
    3)門倉ら(2010) 食科工 57(2): 78-84