CaCCOプロセスによる稲わらおよびエリアンサスからの高濃度糖液製造

要約

CaCCOプロセスの実証のため、乾燥重量10 kg相当量の稲わらおよびエリアンサスを用い、湿式粉砕、100°C以下での前処理、そしてCO2加圧糖化リアクターによる糖化を行うことで、原料中の糖質のうち68-81%を可溶化し、15%(w/v)を超える高濃度糖液を得る。

  • キーワード:CaCCOプロセス、稲わら、エリアンサス、バイオエタノール、糖液
  • 担当:バイオマス利用・エタノール変換技術
  • 代表連絡先:電話 029-838-7991
  • 研究所名:食品総合研究所・食品素材科学研究領域
  • 分類:研究成果情報

背景・ねらい

農研機構では、燃料用エタノール(バイオエタノール)製造のための稲わら、エリアンサスなどの草本原料を安定生産・供給する技術に加えて、バイオエタノールを発酵製造するための糖液を繊維多糖から製造する前処理・糖化技術(CaCCO(Calcium Capturing by Carbonation)プロセス)の開発を行っている。本研究では、数百g以下の原料を用いてきたラボ試験を高度化し、乾燥重量10 kg相当量の稲わらおよびエリアンサスを原料として、CaCCOプロセスでの大量処理を想定した前処理・糖化設備による実証試験を行う。

成果の内容・特徴

  • CaCCOプロセスは、稲わら、エリアンサス等の繊維質原料を粉砕し、水酸化カルシウムおよび水と混合した後、120°C・1時間の前処理を行い、その後、炭酸ガス加圧条件下で繊維多糖であるセルロースやキシラン等を酵素糖化し、糖質を可溶化する工程である(図1)。前処理後の繊維質洗浄・アルカリを除去工程がないため、水の使用を少なくし、糖質の損失を抑制できる。本試験では、ラボ試験で有効性確認した解繊効果を大量粉砕工程に反映するため、新たに湿式粉砕装置(植繊機:シンコーエンジニアリング社)を導入し、原料と水酸化カルシウムと水の混合を行いつつ粉砕・膨化する。前処理は100°C・1時間以下とし、エネルギー投入を節約する。CO2加圧糖化リアクター(図2)を導入し、前処理後の高濃度スラリーをCO2中和する。その後、酵素(Cellic CTec2、ノボザイムズ・ジャパン社、12 FPU/g-乾燥原料)を添加し、CO2分圧9気圧での加圧下で40°C・72時間の酵素糖化を行い、遠心分離後の上澄部として糖液を回収する。
  • 稲わらおよびエリアンサスを用いて糖液製造実証試験を行った際には、稲わらでは原料中の糖質のうち80.6%、そしてエリアンサスでは68.1%を上澄部に回収できる(回収糖質は、単糖およびオリゴ糖より構成。表1)。主にキシラン由来のキシロースの回収率よりも、セルロース由来のグルコースの回収率が低く、この傾向は稲わらよりもエリアンサスの方が顕著である。得られる糖液は、洗浄時の希釈を考慮しない場合には、15%(w/v)を超える高濃度となる。
  • 湿式粉砕の導入によって、天日乾燥稲わらや立枯れ乾燥エリアンサスの供給等に加えて、含水率が50%前後になることもあるような、収穫直後の湿潤原料を貯蔵せずに直接利用でき、供給原料の選択肢が広がることが期待される(図3)。

成果の活用面・留意点

  • 糖液濃度が高ければ、発酵時の糖濃度を高く設定でき、発酵槽の小型化に繋がる。また、バイオエタノールを発酵製造する際には、エタノール濃度が高くなり、蒸留コストやエネルギーを削減できると期待される。さらに、廃液の量が減ることで廃液処理費用が節減できると考えられる。
  • この技術により製造された糖液は、バイオエタノールのみならず、多様な発酵産物の製造に使用でき、地域活性化に貢献するものと期待される。

具体的データ

図1~3、表1

その他

  • 中課題名:セルロース系バイオマスエタノール変換の高効率・簡易化技術の開発
  • 中課題整理番号:220c0
  • 予算区分:交付金、委託プロ(バイオマス)
  • 研究期間:2012 ~2013 年度
  • 研究担当者:徳安健、池正和、趙 鋭、尹旻洙、城間力、我有満、薬師堂謙一、長島實
  • 発表論文等:池ら: J. Appl. Glycosci. (2013) 60: 177-185