紅茶・烏龍茶および抹茶の標準化された客観的味強度評価法

要約

紅茶・烏龍茶の苦味・渋味は、ポリフェノール類を標準物質とする味覚センサー法によって普遍性の高い強度値として示すことができる。抹茶のうま味・渋味強度評価には、試料溶液調製法を改良することによって通常のリーフ緑茶用の従来法が適用可能である。

  • キーワード:味覚センサー、標準化、紅茶、烏龍茶、抹茶
  • 担当:食品機能性・食味・食感評価技術
  • 代表連絡先:電話 029-838-7991
  • 研究所名:食品総合研究所・食品分析研究領域
  • 分類:研究成果情報

背景・ねらい

食品の味を客観的に評価するために、市販の味覚センサー装置の利用が普及しつつある。しかし、ほとんどの場合、その測定値は実際の食品試料に対する相対値であり、普遍性の高いデータを獲得する事は困難である。この問題を解決するために、安価で容易に入手可能な化学物質を味の標準物質として用い、これまでに通常のリーフ緑茶のうま味と渋味について標準化された強度評価法を開発している。
本研究では、新たに紅茶と烏龍茶の苦味・渋味を標準化する方法を開発するとともに、上述の緑茶のうま味・渋味評価法を抹茶に応用し、評価手法の適用範囲の拡大を図る。

成果の内容・特徴

  • 紅茶・烏龍茶では、試料溶液中における苦味センサー(INSENT 社製SB2C00 型)の膜電位変化量と、試料溶液中で渋味センサー(同社製SB2AE1型)に吸着した化学成分に起因する膜電位変化量を、それぞれ苦味と渋味の強さとする。
  • インド・スリランカ産の紅茶、中国・台湾産の烏龍茶の試料溶液は、茶葉2.00gを熱湯(純水)200mLで5分間浸出させて調製する。
  • 紅茶・烏龍茶の苦味センサー出力値は2.00mM(基準点)と0.500mMの没食子酸エチル水溶液によって較正される。それらの渋味センサー出力値は0.650mM(基準点)と0.260mMのエピガロカテキン-3-O-ガレート(EGCg)水溶液によって較正される。味強度は、各標準物質の20%濃度差に相当するセンサー出力値を一目盛りとする尺度上の値として示される。
  • 官能試験とセンサー結果の関係(図1、2)から、味覚センサー出力に基づいて推定される紅茶・烏龍茶の苦味と渋味の各強度は、同一尺度上で比較が可能である(図3)。
  • 抹茶の評価では、茶葉2.00gを熱湯(純水)200mLで5分間浸出させた後、粉末茶葉を遠心分離で速やかに除去することによって試料溶液を調製し、リーフ緑茶用の従来法(http://www.naro.affrc.go.jp/project/results/laboratory/vegetea/2006/vegetea06-18.htmlhttp://www.naro.affrc.go.jp/project/results/laboratory/vegetea/2008/vegetea08-06.html)が適用できる。
  • 茶道用と食品材料用の市販抹茶に対して本法を用いると、用途別の茶の特徴を解析で きる(図4)。

成果の活用面・留意点

  • CTC 製法(Crush=押しつぶす、Tear=引き裂く、Curl=丸める工程を含む製法)で作られた抽出効率の高い紅茶等に対しては、試料溶液調製法の変更が必要である。
  • 緑茶の苦味評価に対する本法の適用可能性は未確認である。
  • 抹茶のうま味評価用試料溶液は、2%w/v のポリビニルポリピロリドンで30分間処理し、ポリフェノール化合物を除去する。
  • 本法によって数値化された味強度は、異なる測定者や測定日、測定場所で得られたデータ間でも比較できるため、味情報のグローバルなコミュニケーションが可能になる。

具体的データ

図1~4

その他

  • 中課題名:食味・食感特性の評価法及び品質情報表示技術の開発
  • 中課題整理番号:310d0
  • 予算区分:交付金
  • 研究期間:2011~2013 年度
  • 研究担当者:林宣之、氏原ともみ、陳栄剛(INSENT)、入江和江(INSENT)、池崎秀和(INSENT)
  • 発表論文等:
    1) Hayashi N. et al. (2013) Food Res. Int. 53(2):816-821
    2) Ujihara T. et al. (2013) Food Sci. Technol. Res. 19(6):1099-1105