持ちやすく損傷せず品質保持ができるリンゴ携行容器

要約

個人携行輸出のためのリンゴ容器を開発する。リンゴが底付きしないサイズのパルプモールドに二酸化炭素吸着剤を同封し、40 μmポリエチレンフィルムでリンゴを脱気包装すると、輸送中のリンゴの回転や損傷発生がなくなり、貯蔵性も良好となる。

  • キーワード:リンゴ、携行容器、輸出、脱気包装、MA包装
  • 担当:加工流通プロセス・先端流通加工
  • 代表連絡先:電話 029-838-7991
  • 研究所名:食品総合研究所・食品工学研究領域
  • 分類:研究成果情報

背景・ねらい

これまでの果実輸出では、トラック、航空機、船等の荷台やコンテナにおける輸送中の振動・衝撃を考慮して設計を行っている。個人携行輸出では、通常の輸出と全く異なる振動・衝撃が果実に加わることが想定される。そこで、加速度計や衝撃検知ラベル等を使って携行輸送における環境の実態把握を行うとともに、緩衝性能を有し、さらにMA(Modified Atmosphere)包装や鮮度保持資材等を併用した品質保持機能を持った包装資材を設計する。また、リンゴ携行容器の持ちやすさを人間工学的観点から検討する。

成果の内容・特徴

  • 2個入り容器として市販されている段ボールにパルプモールドトレイを入れる通常型タイプの容器を使って落下試験を行う。一回りサイズの小さいパルプモールド(図1a)にリンゴを入れ、ストレッチフィルムでリンゴを固定することで、損傷がほとんどなく、玉回りがないことがわかる。
  • 作業性を考慮して、ストレッチフィルムの代わりに脱気包装について検討する。脱気包装において一般的に使用されるナイロン/ポリエチレンフィルム(Ny/PE)では、ガス透過性が低いため袋内二酸化炭素濃度が数10%と高くなり、リンゴの変色が生じる(図2)。一方、20μmポリエチレンフィルムで包装した場合では、ガス透過性が高すぎるため、貯蔵開始数日間で袋が膨れてしまう。ポリエチレン40μmフィルムでは袋が膨れることはない。しかし、この条件では袋内酸素濃度が低下すると同時に二酸化炭素濃度が高くなり、リンゴの褐変リスクがあがると考えられるため、脱気包装を行う際に、二酸化炭素吸着剤を同封する包装形態を試作する(図1b))。その結果、貯蔵2週間後において酸素濃度が10%前後、二酸化炭素濃度0%となり、リンゴの褐変は見られない。
  • ポリエチレン40 μmフィルムに二酸化炭素吸着剤を同封して脱気包装した包装形態で、落下試験および実輸送試験を行う。リンゴの玉回りや底面が損傷することなく、また品質低下を十分に抑制できることが確認できる。
  • 携行容器の持ち手のサイズを人の手の寸法のデータベースから試算し、横97 mm、縦31 mmとする(図1c))。触覚アレイセンサ(面圧センサ)を使って把持試験を行った結果、手が容器に接触することなく容易に把持できることが確認できる。

成果の活用面・留意点

  • 2個入りサイズの携行容器の試作を行ったが、引き続き4個、6個入りなど各種サイズの容器の試作を行う必要がある。
  • 輸送シミュレーションや実際の国内輸送において損傷確認を行ったが、海外への実輸送試験は実施していないので早急に実施する必要がある。

具体的データ

図1

その他

  • 中課題名:先端技術を活用した流通・加工利用技術及び評価技術の開発
  • 中課題整理番号:330c0
  • 予算区分:交付金
  • 研究期間:2012~2015年度
  • 研究担当者:石川豊、永田雅靖、北澤裕明
  • 発表論文等:Li Y. et al. (2014) Postharvest Biol. Technol. 92: 107-113