マウスにおける羊スクレイピーの伝達試験および免疫組織学的手法によるプリオン蛋白質の検出

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要約

羊スクレイピーを伝達したマウスの各臓器におけるプリオン蛋白質の分布をほかのマウスへの伝達試験および免疫組織化学法により明らかにした。

  • 担当: 家畜衛生試験場 総合診断研究部 病理診断研究室
  • 連絡先:0298-38-7774
  • 部会名:家畜衛生
  • 専門:診断予防
  • 対象:羊
  • 分類:指導

背景・ねらい

羊スクレイピー感染および牛伝達性海綿状脳症等のプリオン病の特徴病変である海綿状脳症(空胞変性)とプリオン蛋白質の蓄積の関係および臓器におけるプリオン蛋白質の分布をマウスへの伝達試験と免疫組織化学的手法を用いて明らかにする。

成果の内容・特徴

  • プリオン蛋白質の蓄積臓器
    スクレイピー感染羊の脳材料を4継代したマウスが末期的症状を示した時点で,脳,眼球,脾臓,胸腺,唾液腺,肺,骨格筋,腎臓及び肝臓の伝達性のプリオン蛋白質の存在を明らかにするために,それぞれの臓器から10%乳剤を作製し,その0.02mlを脳内接種した。マウスにおける潜伏期の日数は脳137±0(n=7),眼球144±2(n=9),脾臓153±1(n=6),胸腺154±2(n=6),唾液腺162±0(n=7),肺169±2(n=7),骨格筋189±2(n=6),腎臓201±4(n=6),及び肝臓268±62日(n=7)であった(表1)。
    以上のことから,伝達性プリオン蛋白質は,すでに報告のある脳,脾臓,唾液腺だけでなく,胸腺,肺,骨格筋等,多くの臓器に蓄積することが明らかになった。
  • プリオン蛋白質の免疫組織学的検出
    プリオン蛋白質のアミノ酸配列の213から226番目までの合成ペプチドに対する抗血清を用いて,プリオン蛋白質の免疫組織化学的検出を試みたところ,脳,眼球,脾臓,唾液腺,胸腺では陽性部位があった。脳では海綿状変性の存在する部位に一致し,脾臓及び胸腺では濾胞樹枝状細胞とみなされた細胞に(図1),唾液腺で一部の漿液腺細胞内の顆粒に一致していた。眼球の陽性部位は網膜の外網状層が強く(図2),視細胞も弱い陽性を示したが,内網状層は陰性であった。免疫組織化学的手法では肝臓,腎臓,膵臓及び肺におけるプリオン蛋白質は検出できなかった。

成果の活用面・留意点

羊スクレイピーの診断はマウスへの伝達,病理組織学的および免疫組織化学的手法によるプリオン蛋白質の証明によって,より正確に行うことが可能となった。今後,スクレイピー感染羊を生前に的確に診断する手法を開発する必要があろう。

具体的データ

表1 スクレイピーの4継代マウスの各臓器を脳内接種されたマウスの潜伏期

図1 4代継代したマウスの脳乳剤を接種したマウスの脾臓。

図2 4代継代したマウスの脳乳剤を接種したマウスの網膜

その他

  • 研究課題名:プリオン蛋白及びその遺伝子の機能解析・制御の研究
  • 予算区分 :科振調[脳機能]
  • 研究期間 :平成6年度(平成4年度~平成6年度)
  • 発表論文等:家畜衛試研究報告 99:23-27(1993).
                      家畜衛試研究報告 100:15-19(1994).