牛脂肪肝関連タンパク質のELISAによる測定

要約

脂肪肝牛では血中のアポリポタンパク質A-IとB-100が減少し,ハプトグロビンが増加する。脂肪肝を特異的かつ迅速に診断するため,これらタンパク質のELISAによる測定法を開発した。

  • 担当: 家畜衛生試験場 総合診断研究部 生化学研究室
  • 連絡先:0298-38-7807
  • 部会名:家畜衛生
  • 専門:診断予防
  • 対象:乳用牛
  • 分類:研究

背景・ねらい

牛の脂肪肝は周産期に多発し,ケトージス等の代謝病,繁殖障害,日和見感染症の引き金になる。このため,脂肪肝の特異的かつ迅速診断法の開発が望まれていたが,肝生検以外によい方法はなかった。脂肪肝では肝臓からのリポタンパク質の分泌能が低下するため,肝臓で生成されるA-I,B-100等のアポリポタンパク質の血中濃度が減少する。また,出産ストレスが脂肪肝発症の誘因ともなるため,副腎皮質ホルモンで誘導されるハプトグロビン(Hp)が血中に出現する。脂肪肝の診断に供するため,これらタンパク質のELISAによる測定法を開発した。

成果の内容・特徴

  • A-I,B-100及びHpを牛血清より精製し,兎に対して抗体を作製した。
  • 各タンパク質のELISA法を開発し,これらタンパク質の血中濃度を測定した。
  • A-Iはエチオニン投与による実験的脂肪肝牛で低下していた(図1)。
  • B-100は出産時及び泌乳初期で低値を示した(図2)。この時期の低下が周産期での脂肪肝の発症に繋がるものと考えられた。
  • 牛のHp濃度は,ヒトとは異なり,健康牛ではELISAでも測定できないほど低かった(図3,ELISAの検出限界は10ng/ml)。しかし,脂肪肝牛(病理所見では明確な炎症像は見られなかった牛)でHpが検出された。このことはHpが脂肪肝の早期診断に有用であることを示唆している。

成果の活用面・留意点

脂肪肝の発症機構に基礎を置いた診断法が初めて開発された。B-100は脂肪肝の他,脂肪肝に誘因するケトージス,第4胃変異で減少する。A-Iは下痢等の腸疾患で低下し,また,Hpは炎症で増加する。しかし,これら3つのタンパク質が同時に増減する疾病は,脂肪肝以外知られていない。これら3つのタンパク質を同時に測定することにより,他の疾病との類症鑑別が可能である。更に,コレステロール,遊離脂肪酸等の一般血液検査データを参考にすることが望ましい。

具体的データ

図1 実験的エチオニン脂肪肝での血清中A-I濃度の減少

図2 泌乳期別のB-100濃度

図3 健康牛及び脂肪肝牛(野外発生例)のHp濃度

その他

  • 研究課題名:細胞レベルでの牛脂肪肝及び乳房炎の病態解析
  • 予算区分 :経常
  • 研究期間 :平成3年度~平成7年度
  • 発表論文等:1) Enzyme-linked immunosorbent assay for apolipoprotein A-I in the
                        serum of cattle.Am.J.Vet.Res.56:409-414(1995).
                      2) 牛血清中アポリポタンパク質B-100のELISAの開発と乳期別濃度。
                        第119回日本獣医学会(東京,1995).
                      3) ELISA法で測定した健康牛および脂肪肝牛の血中ハプトグロビン濃度。
                        第119回日本獣医学会(東京,1995).