第一胃由来の内因性遊離エンドトキシンによって誘発される肝臓病変の特徴

要約

濃厚飼料の給与により第一胃内において生成された内因性遊離エンドトキシンを血管内に投与すると肝臓病変が容易に形成されることを明確にした。重傷牛では,肝臓の類洞壁細胞の酸性ホスファターゼ活性が低下し,肝臓障害の予後判定に役立つ可能性を示していた。

  • 担当: 家畜衛生試験場 研究第三部 病理第2研究室
  • 連絡先:0298-38-7776
  • 部会名:家畜衛生
  • 専門:診断予防
  • 対象:牛
  • 分類:研究

背景・ねらい

濃厚飼料を多給した牛では,第一胃内において内因性遊離エンドトキシン(R-ET)の濃度が著しく増大することが知られている。このR-ETは大腸菌由来の精製リポ多糖体(LPS)と同様な生体反応を示すため,R-ETが消化管静脈を介して血中に入り,肝臓障害や消化管障害を誘発する可能性がある。一方,濃厚飼料を多給された牛では,小壊死巣と出血や毛細血管の洞状拡張を主徴とする鋸屑肝や第四胃変位などが多発しており,R-ETとの関連性を解明する必要性が高まっている。このため,本研究では,R-ETおよびLPSを消化管静脈や頸静脈などから投与した後,経時的に生検法によって肝臓の組織片を採取し,肝臓に発現する形態的変化および肝臓の類洞壁細胞の酵素活性の変化についても検討した。

成果の内容・特徴

  • R-ETを投与後2-4時間で好中球の湿潤が類洞内および小葉間結合織に認められ,類洞内皮細胞やクッパー細胞は投与後6時間から著しく腫大した(表1)。これらの変化は,注入したR-ETの濃度が高いほどより明瞭であった。
  • 高濃度のR-ETを投与した牛の肝臓では,投与後8時間から72時間の期間に凝固壊死巣が観察され,時間の経過と共に壊死巣は多発した(写真1)。
  • LPSを投与した牛の肝臓においても,投与後2-4時間後にR-ET注入例と同様の好中球湿潤やクッパー細胞の腫大などが観察され,大量のLPS投与では24時間以降に壊死巣が観察された。
  • R-ETの投与後10時間で急死した牛では,好中球湿潤およびクッパー細胞などの腫大が投与後4時間から観察され,死亡時には小壊死巣が形成されていた。また,類洞壁細胞の酸性ホスファターゼ(AP)活性は,投与後6時間以降に減少する傾向が認められた(写真2)。
  • R-ETあるいはLPS投与によって死亡しなかった牛では,肝臓のAP活性は,投与後8時間から48時間の間に増加する傾向が見られた。このことから,類洞壁細胞のAP活性の差異を観察することにより,病変の形成や予後の判定が可能になるものと考えられる。

成果の活用面・留意点

R-ETは,消化管静脈や頸静脈内投与によりLPSと同様の肝臓病変を形成することから,野外で多発している鋸屑肝などの肝臓病変とR-ETとの関連性が強く示唆された。今回の成績は,肥育牛の肝臓障害の早期診断や予後判定に応用し得るものと考えられる。

具体的データ

表1 第一胃由来内因性遊離エンドトキシン(R-ET)を投与した牛(BN5370)の生検肝の病理組織学的変化

写真1 R-ET投与後24時間の肝臓に形成された小壊死巣

写真2 R-ET投与後死亡した牛の肝臓の酸性ホスファターゼ活性

その他

  • 研究課題名:代謝障害時における肝類洞壁細胞の動態と役割に関する細胞病理学的検討
  • 予算区分 :経常研究
  • 研究期間 :平成4年度~平成6年度
  • 発表論文等:1) エンドトキシン注入牛から経時的に採材した生検肝にみられた病理
                      学的変化。獣医畜産新報 45:281-282(1992).
                      2) 第112回日本獣医学会講演要旨集,p.200(1991).
                      3) 第115回日本獣医学会講演要旨集,p.122,(1993).