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株化されたウシ胎仔胸腺由来細胞を形態学的および免疫学的にマクロファージと同定した。この細胞は,rBoIFN-γ存在下でMHC抗原の発現を増強した。また,LPSの刺激によりIL-1α,IL-1βの転写活性が認められた。
家畜の免疫調整機能や生体防御機構の研究を推進するにあたっては,そのシステムを構成している個々の細胞の特性や役割を明らかにする必要がある。そのためには,細胞株等均一な細胞集団を用いることが有効である。異物・老廃物などの貪食・清掃,抗原の提示,サイトカイン等の分泌など生体の免疫システムの重要な役割を担っているマクロファージのウシにおける株化の報告は少なく,また,その継代にはコンディションメディウムを必要としている。生体におけるマクロファージの分布や特徴が異なるように,細胞株を用いた研究にはさまざまなタイプの細胞株が必要とされるが,本研究では,胎仔からのマクロファージ細胞株の樹立を試みた。
ウシ胎仔(6ヵ月齢)の胸腺由来細胞を1年以上継代培養し株化した。この株化細胞(FBM-17)(図1)は,非特異的エステラーゼ陽性を示し,貪食活性が認められ,IgGに対するFcレセプターを発現していた。また,電顕観察では多数のファゴゾームや部分的に拡張した粗面小胞体が認められた(図2)。さらに,recombinant bovine gamma-interferon(rBoIFN-γ)存在下で培養するとMHC Class I,Class IIの発現が増強された(図3)。これらの結果から,この株化細胞はマクロファージと同定された。また,この細胞の維持には10%ウシ胎仔血清添加RPMI1640を使用し,コンディションメディウム等は必要としなかった。さらに,LPSあるいはTPAの刺激によりIL-1α,IL-1βの転写活性がRT-PCRで確認された(図4)。
この細胞株FBM-17は,MHC抗原を発現し,また,LPS等の刺激によりIL-1が産生されるなどの性質を持つことから,免疫調節機能や生体防御機構の解析,病原体の感染実験に有用であると考えられる。